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#3 罠と死体とみんなのアリバイ【糾弾ホームルーム篇】

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「もちろぉぉん、ロスタイムなんてものは認めませぇぇぇん。なぜならぁ、やろうと思えば諸君らがいくらでも時間稼ぎできてしまうからですぅ。やれ、あれが気になるから調べろとか、不備があるからしっかりやれ――とか、制限時間ギリギリで常に鑑識官を動かしていれば、タイムアウトが延々と先送りされてしまうでしょう? ですからぁ、今回はロスタイムを設けませぇぇん」

 ロスタイム――すなわち、鑑識官が要望を受けて現場を調べている時間は、余分な時間だと認められない。あくまでもホームルームと並行して行われる。すなわち、引き出せる情報量にも限りがあるし、下手なことで鑑識官を動かしてしまうと、本当に知りたいことが出てきた時に、鑑識官が動けないなんてこともあり得るだろう。

「ちなみにぃ、鑑識官を奴隷みたいにこき使われても嫌ですからぁ、ひとつの事柄を調べている間に、別のことを調べさせるという行為は禁止としまぁぁす。つーまーりー、現状で筆跡鑑定を行っているわけですからぁ、それが終わるまで鑑識官は他のことを調べることができないことにします。どれどけ鑑識官の人数に余裕があろうとも、ひとつの事項を調べ終えるまで、他のことは調べられないとしましょう」

 しかも、なんたる不器用なことか。鑑識官の数はかなりの人数になるはずなのに、ひとつの事柄が終わるまで、他のことは調べることができない。制限時間はわずか1時間で、鑑識官が鑑識にかける時間を15分程度だと仮定すると――新しい情報を引っ張り出せる数も決して多くはない。

 何を鑑識官に調べてもらうか。その辺りの選別も上手にやらなければ、本来必要なはずの情報が手に入らない恐れがある。まぁ、筆跡鑑定に関しては芽衣も知らずに請求したわけだから仕方がない。それに、筆跡を調べること自体は損にならないだろう。まぁ、星野崎の筆跡か否かを知ることができるだけだし、プラスになるかといえば微妙なところだが。

「なんだかよく分からねぇけど、鑑識官の使いどころを間違えんなってことか――」

 本田がどこまで理解しているかは不明だが、大体それで合っている。本当に深く引き出す必要のある情報にのみ的を絞って、効率良く鑑識官を使う。これまでのホームルームにはなかった要素が、意図せずして追加されたような感じだ。ゆえに、今後はどの情報を優先的に引き出すか――材料の取捨選択が重要となってくる。
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