糾弾ホームルーム! ―ぼくたち、わたしたちの主張―

鬼霧宗作

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#3 罠と死体とみんなのアリバイ【糾弾ホームルーム篇】

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「ふむ……確かにぃ、その辺りのことは詳しく書かれていませんねぇ。これでもし、筆跡が星野崎君のものではないと明らかになればぁ、何者かが偽装工作したことになりますぅ。たーだぁ、誰の筆跡かまで明らかになってしまうとぉ、それこそ犯人を晒してしまうようなことになりますからぁ、あくまでも筆跡が星野崎君のものか否かという結果しか公表しません。それでもよろしいなら、今すぐに筆跡鑑定を行いましょう」

 芽衣の要望はあっさりと姫乙に通った。やはり突貫作業的な面もあったようで、鑑識官にも見落としがあるようだ。それに関しては、こちらから要望して姫乙が妥当だと思えば、明確にしてくれるのだろう。逆説的に言ってしまうと、事件解決のための材料が現時点では揃っていない可能性があるということ。自分達で必要な材料を選別し、足りないものは姫乙に申し出て、自分達で情報量を増やさねばならないということだ。

「それでも構わないから鑑定してもらえる?」

 芽衣が言うと姫乙が鑑識官のほうへと目配せをする。鑑識官はがっくりと肩を落とし、教室から外へ出る。ガスマスク越しで表情は見えないが、明らかに面倒臭そうなリアクションをとられてしまった。鑑識官とて個性があるだろうに、そのほとんどが似通った個性だから困る。

「さてぇ、筆跡鑑定が終わるまで待っている時間も、もったいないことでしょう。ダイイングメッセージの件はとりあえず置いといて、ほかの議題に移ったほうが良いのではないですか? 制限時間は1時間なのですからぁ」

 当たり前のように放たれた姫乙の言葉に、芽衣が眉をひそめる。安藤もまた、無意識のうちに眉間にしわを寄せていたことに気付いた。どうやら今回は、鑑識が動いている間でも時間は経過するようだ。

「――前回みたいにロスタイムの扱いにならないの? 言ってしまえば、筆跡鑑定を行っていなかったのは、そちらの落ち度みたいなものでしょう?」

 むろん、こちらだって黙ってはいない。芽衣が反論しなければ、代わりに安藤が反論していたことであろう。鑑識が調査している間も同時進行で制限時間が減ってしまうのは、あまりにも分が悪い。この先も鑑識の力が必要になるかもしれないし、いざ調べて欲しい事柄が出てきても、制限時間終了間際では意味がない。調べるのは鑑識官であって、どれだけ時間がかかるかは彼ら任せなのだから、調べたいことに対して時間が足りなくなる恐れは充分にある。
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