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#3 罠と死体とみんなのアリバイ【糾弾ホームルーム篇】
#3 罠と死体とみんなのアリバイ【糾弾ホームルーム篇】1
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【1】
「今回も僕が進行役をすればいいかい?」
姫乙によって【糾弾ホームルーム】の開始を告げられた直後、誰よりも先に口火を切ったのは小宮山だった。そう言いつつもすでに席を立ち上がった辺り、進行役をする気満々なのであろう。もう、これだけの人数ならば、取りまとめる必要もないように思えるのだが。誰からも文句の声は上がらず、そのまま小宮山が教壇に立った。
「えっと、今回の事件には見取り図なんかも入ってるし、書記の人が必要だと思うんだけど、誰かやってくれないかい?」
自ら立候補するだけあって、一応色々と考えてはいるのだろう。小宮山の言う通り、今回は見取り図などが多いし、言葉よりも絵を使って議論をしたほうが分かりやすそうだ。書記は必要であろう。
「それだったら私が――。前の【糾弾ホームルーム】でも、大して発言できていないし」
そう言って手を挙げたのは舞だった。小動物的な存在で、クラスでは非常に地味な立ち位置にいる。けれども、しっかりと化粧をすれば映える顔立ちであると安藤は思っていた。性格的に前面に出られないだけで、もう少し化粧をしっかりとして、性格も明るければ、クラスカーストの上位にいたかもしれないとさえ思う。今となっては、そのスクールカースト制度が崩壊してしまったから、関係のないことなのだが。
「そ、それじゃあ、書記は進藤さんにお願いするってことでいいですか? ほっ、他に書記をやりたいって人はいませんか?」
正直なところ、わざわざ議論すべき問題ではないように思える。ホームルームの中心となる芽衣辺りに書記をやられると困るが、それ以外であれば誰でも変わらないような気がする。
「進藤にやってもらえばいいじゃねぇか。本人がやるって言ってくれてんだしよ」
恐らく、誰もが気にしない場面で、小宮山が妙に慎重な姿勢を見せるからであろう。本田が机の上に両足を乗せながら、やや不機嫌そうに漏らす。それに小宮山はすっかり固まってしまい「そ、それじゃあ進藤さん。お、お願いします」と声をうわずらせた。進藤は小さく頷くと立ち上がり、そして教壇の端っこへと立った。
「そ、それでは今からホームルームを始めます。何か意見や議題がある方がいたら、遠慮せずに手を挙げてくだ――」
「はい――」
進行役の小宮山の言葉を遮って、誰よりも早く手を挙げたのは小雪だった。その割り込み方さえも、なんだかお上品に見えるから不思議だ。御令嬢であることを改めて知ったからこその先入観なのかもしれないが。
「今回も僕が進行役をすればいいかい?」
姫乙によって【糾弾ホームルーム】の開始を告げられた直後、誰よりも先に口火を切ったのは小宮山だった。そう言いつつもすでに席を立ち上がった辺り、進行役をする気満々なのであろう。もう、これだけの人数ならば、取りまとめる必要もないように思えるのだが。誰からも文句の声は上がらず、そのまま小宮山が教壇に立った。
「えっと、今回の事件には見取り図なんかも入ってるし、書記の人が必要だと思うんだけど、誰かやってくれないかい?」
自ら立候補するだけあって、一応色々と考えてはいるのだろう。小宮山の言う通り、今回は見取り図などが多いし、言葉よりも絵を使って議論をしたほうが分かりやすそうだ。書記は必要であろう。
「それだったら私が――。前の【糾弾ホームルーム】でも、大して発言できていないし」
そう言って手を挙げたのは舞だった。小動物的な存在で、クラスでは非常に地味な立ち位置にいる。けれども、しっかりと化粧をすれば映える顔立ちであると安藤は思っていた。性格的に前面に出られないだけで、もう少し化粧をしっかりとして、性格も明るければ、クラスカーストの上位にいたかもしれないとさえ思う。今となっては、そのスクールカースト制度が崩壊してしまったから、関係のないことなのだが。
「そ、それじゃあ、書記は進藤さんにお願いするってことでいいですか? ほっ、他に書記をやりたいって人はいませんか?」
正直なところ、わざわざ議論すべき問題ではないように思える。ホームルームの中心となる芽衣辺りに書記をやられると困るが、それ以外であれば誰でも変わらないような気がする。
「進藤にやってもらえばいいじゃねぇか。本人がやるって言ってくれてんだしよ」
恐らく、誰もが気にしない場面で、小宮山が妙に慎重な姿勢を見せるからであろう。本田が机の上に両足を乗せながら、やや不機嫌そうに漏らす。それに小宮山はすっかり固まってしまい「そ、それじゃあ進藤さん。お、お願いします」と声をうわずらせた。進藤は小さく頷くと立ち上がり、そして教壇の端っこへと立った。
「そ、それでは今からホームルームを始めます。何か意見や議題がある方がいたら、遠慮せずに手を挙げてくだ――」
「はい――」
進行役の小宮山の言葉を遮って、誰よりも早く手を挙げたのは小雪だった。その割り込み方さえも、なんだかお上品に見えるから不思議だ。御令嬢であることを改めて知ったからこその先入観なのかもしれないが。
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