糾弾ホームルーム! ―ぼくたち、わたしたちの主張―

鬼霧宗作

文字の大きさ
上 下
272 / 468
#3 罠と死体とみんなのアリバイ【復讐篇】

8

しおりを挟む
 元の力関係のようなものが、そこに作用したのであろうか。いや、単純に腕っぷしの強さからして、自然とそうなったのであろう。本田が一人でシャワー室の扉の前に立ち、そして安藤と小宮山はトイレの扉の前に立った。

「シャワー室は俺が調べる。お前らは二人でトイレを調べてくれ。何かあったら大声で呼べよ。すぐに駆けつけてやる」

 本田が一人でシャワー室をカバーする。そして、安藤と小宮山がトイレを調べることになるのだが、自然と小宮山の足が女子トイレのほうに向かったのは、もう仕方のないことなのかもしれない。本来より気の小さい男である小宮山が、男子トイレのほうを選択するわけがないのだ。女子トイレに潜むのが女子だと決まっているわけではないのに。

「じゃあ、男子トイレは僕が調べる。女子トイレは委員長が調べてよ」

 もはや口に出さずとも、それぞれのポジションというのは決まっていたのだが、あえてそれを口にする安藤と、わざとらしく切り返してくる小宮山。

「だっ、男子トイレは僕が調べようと思ってたんだけど――まぁ、安藤君が調べたいというなら仕方がない。女子トイレを調べるというのは変な罪悪感があるけど、それを我慢して調べるよ」

 どう転がしても自分が良い風に映るように装う。小宮山の常套じょうとう手段であるが、今さらになってどうこう言うつもりはない。根は真面目で、悪いやつではないし。

 可能性としてはかなり低いだろうし、まず間違いなく誰も潜んではいない。それは分かっているのであるが、嫌でも心臓が強く鼓動を打つ。本田と小宮山の二人とアイコンタクトを取り、そして一斉に扉を開け放った。本田がシャワー室の中に飛び込み、それを見た安藤はトイレの中に足を踏み入れる。最後になったのは小宮山だったようで、安藤がトイレに入ったのと時間差で、隣の女子トイレの扉が閉まる音がした。

 トイレの中はいたってシンプルというべきか、隠れるのであれば個室しかない。幸いなことに手前の掃除用具入れは扉がなく、無造作にモップやらバケツやらが詰め込まれているのが見えた。人が隠れているような気配はない。続いて、安藤は個室のドアに手をかける。深呼吸をしてから勢い良くドアを開けたが、そこには便器がぽつんとあるだけだった。分かっていても安堵の溜め息が出る。

「おらー! 隠れてねぇで出てこいやぁぁぁ!」

 シャワー室を調べている本田の声が、壁を隔てて響いてくる。その声が聞こえるだけでも心強く感じるのだから不思議だ。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】知られてはいけない

ひなこ
ホラー
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。 他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。 登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。 勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。 一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか? 心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。 (第二回きずな文学賞で奨励賞受賞)

終焉の教室

シロタカズキ
ホラー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。 そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。 提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。 最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。 しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。 そして、一人目の犠牲者が決まった――。 果たして、このデスゲームの真の目的は? 誰が裏切り者で、誰が生き残るのか? 友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純一
ミステリー
高校生の田中健太と隣の席の山本咲良の体が入れ替わる話

―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》

EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。 歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。 そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。 「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。 そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。 制刻を始めとする異質な隊員等。 そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。 元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。 〇案内と注意 1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。 3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。 4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。 5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。

処理中です...