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#3 罠と死体とみんなのアリバイ【復讐篇】

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 道場に足を踏み入れようとして、しかし安藤は少しばかり迷ってしまった。これまで、クラスメイトの死体というものは何度も見てきたが、実際に間近で調べるというのは初めてである。この道場という空間には、かつて星野崎と呼ばれた一人の人間の死体があるわけであり、そこに足を踏み入れることに戸惑いのようなものがあったのだ。

「安藤、俺も行くからビビる必要は無ぇ」

 安藤の気持ちを察したのか、ちょっと痛いくらいの勢いで肩を叩いてきたのは本田だった。

「僕も行くよ。男子は僕達しかいないからね」

 声をやや震わせながらも、変な使命感を抱くは小宮山だ。アベンジャーとして追放されてしまった坂崎は別にして、生き残っている男子は、安藤、本田、小宮山だけになってしまった。一応、星野崎も男手として計算に入れていたつもりだったのであるが、もう数として計算できなくなってしまった。

「どうも女にばっかに囲まれるってのは、肩身が狭くて良く無ぇな――」

 安藤、小雪、芽衣、小宮山、香純、舞、本田、真綾。坂崎は別にして生き残りは全部で8人。ついさっきまで9人だったのを減らしてしまい8人だ。その中でも女子のほうが数が多く、本田は肩身の狭さを感じているようだった。どの社会でも、結局のところ男性より女性のほうが強かったりするのだが、男には変なプライドというものがある。それに、遺体を調べるなんて作業は、きっと男の仕事なのであろう。それを否定するかのごとく、女子から声が上がる。

「私も混ぜて。どうやら、私の中で完全に予期していなかったことが起きているみたいだから」

 安藤と本田に小宮山。男性陣の中にさも当然と言わんばかりに入ってきたのは芽衣だった。まだ鑑識係の奴らはこない。このチャンスを逃す手はないだろう。

 安藤達はそれぞれ互いに頷き合うと、ゆっくりと道場の中へと足を踏み入れた。普段は靴を脱いで畳の上にあがるのだが、上履きを脱がずに畳の上にあがってやる。小雪、香純、舞、真綾の4人は、道場の入り口で安藤達のことを見守る。

「それでよ、やっぱり星野崎が死んだ原因――死因ってやつは、この背中にぶっ刺さってる奴なのか?」

 星野崎の死体のそばまでやってくると、本田が腕を組みつつ口を開いた。星野崎の背中にはボウガンの矢らしきものが刺さっている。そして、入り口から向かって左側の壁にも、何本か同じものが突き刺さっていることに気付いた安藤は、そちらのほうへと向かう。

「うん、ボウガンの矢だと思うけど、これが直接的な死因だろうね。星野崎君が頭を向けている方向から考えて、道場の右手側から背中を狙われたと思われる」
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