糾弾ホームルーム! ―ぼくたち、わたしたちの主張―

鬼霧宗作

文字の大きさ
上 下
260 / 468
#3 罠と死体とみんなのアリバイ【プロローグ】

9

しおりを挟む
 ゴールの提示。これは、安藤達にとって非常に大切なものだった。

 これまでは漠然と、クラスメイトに混じったアベンジャーが全滅すれば、それで全てが終わると思っていた。しかし、芽衣の推測により、クラスメイト全員が元よりアベンジャーだとすると、いつまで経っても終わらないことになる。なぜなら、最後に生き残る人間もまたアベンジャーだからだ。

 芽衣の言葉に黙ったままの姫乙。ゴールの提示という点で考え込まれてしまうのも、なんだか嫌なものだ。ゴールのことなんて、最初から姫乙の頭にないことを証明するようなものなのだから。

「まさか、あれだけデスゲームあるあるを嫌っていたあなたが、ゼロサムゲームをしようだなんて思っていないわよね?」

 さらに姫乙を問い詰めるかのごとく、芽衣が口調を強める。ゼロサムゲームという単語自体は、ゲームのやりすぎなのか安藤自身も知っていた。最後の一人になるまで繰り広げられるもの。逆に言ってしまえば最後の一人になるまで続けられる。それがゼロサムゲームだ。

「ま、まさかゼロサムゲームなんてするわけがないではないですかぁ。そんなデスゲームの王道をなぞるなんて真似はしませんよぉ」

 慌てて否定をする辺り、もし何も疑問を持たれなければ、このまま延々と続けるつもりだったのかもしれない。それを芽衣は明確化しに取り掛かったのであろう。

 用意してもらったスマートフォンが、学校でも問題なく使えることが明らかになった。ゆえに、ここからは次の段階へと入るつもりなのだ。少し休めばいいような気もするが、芽衣は一度走り出した足を止めようとしない。

「だったら、今ここで明確なゴールを私達に提示して。いつ、なんどき、どんな状態になったら、私達はふざけたモデルケースから解放されるのか。それを私達が納得する形で提示する義務が、あなたにはあると思うわ」

 いつだったか、姫乙は芽衣のことを煮ても焼いても食えないと表現したが、まったくもってその通りである。いつもと変わらずに【姫乙史】をするつもりだった姫乙からすれば、まさしく寝耳に水。思いも寄らない展開だったのであろう。

「確かにぃ、そうかもしれませんねぇ。ただぁ、正直なところぉ、一度にどれだけの人が殺されてしまうか先が読めないがゆえにぃ、明確なゴールというものを決めていなかったりするのですぅ。ただ、ゴールを提示するというご意見もごもっともですぅ。さてぇ、どうしましょうかねぇ」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】知られてはいけない

ひなこ
ホラー
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。 他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。 登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。 勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。 一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか? 心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。 (第二回きずな文学賞で奨励賞受賞)

終焉の教室

シロタカズキ
ホラー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。 そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。 提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。 最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。 しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。 そして、一人目の犠牲者が決まった――。 果たして、このデスゲームの真の目的は? 誰が裏切り者で、誰が生き残るのか? 友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純一
ミステリー
高校生の田中健太と隣の席の山本咲良の体が入れ替わる話

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

伏線回収の夏

影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。 《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》

処理中です...