251 / 468
それぞれの週末【2】
5
しおりを挟む
その言葉に姫乙は気味の悪い笑みを浮かべるばかり。
「確かにぃ、しかし彼女はそこまで愚かではありませぇん。迂闊にぃ、それこそ露骨に取り入るかのように体を売るような真似はしませんよ」
姫乙はそこで言葉を区切ると、小さなテーブルを挟んだ向こう側のほうへ手を差し出した。どうやら、座れという意味らしい。
てっきりさっさと始めてしまうものだと思っていたのだが、そうではないらしい。姫乙はかたわらに置いてあった鞄に手を伸ばすと、資料らしきものを取り出す。
「何か飲み物はぁ? お酒は20歳になってから――なんてのは、便宜上のものであってぇ、未成年でもガンガン飲んでるでしょう? それに関しては、大人も口うるさく言わないしぃ、国も特に対策をしませぇぇぇん。なぜだか分かりますかぁ?」
小さな冷蔵庫を漁りながら問うてくる姫乙。彼女が黙ったままでいると、彼は可愛らしいカクテルのようなものを取り出しつつ、再び口を開いた。
「酒税により国が潤うからですぅ。人間ってのは愚かなもので、ひとたび快楽を覚えてしまえばぁ、それを忘れられなくなるのですぅ。煙草に然りぃ、酒に然りぃ、セックスに然りですぅ。ですからぁ、私は以前よりセックスにも税金をかけろと言っているのですがねぇ。まぁ、それはやりすぎですかねぇ」
カクテルが彼女の前に置かれる。それはアルコールなんて入っていないに等しいカクテルだったが、あまりお酒を飲み慣れない彼女からすれば、それは充分すぎるほどに酒だった。
「さてぇ、越井香純さぁぁあん。資料によりますと、中学時代と現在ではかなりの変貌ぶりのようですぅ。お互いに親友だと思っていたはずの同級生、進藤舞さんともぉ、高校に入ってから疎遠になっているようですねぇ。確かにぃ、あなた達の間にはギクシャクとしたものが垣間見えていましたねぇ」
舞は中学校時代の大親友。よく、一緒にアニメのイベントなどに通っていたものだ。アニメのキャラクターに本気で恋をしてみたり――なんてこともしていた。それが世間一般からズレた認識だと知ったのは、きっと中学を卒業するちょっと前だった。
「そんなことはどうでもいいしさ。そろそろベッドに行かない?」
缶入りのカクテルを一気に飲み干してしまうと、彼女――香純は姫乙をベッドに誘う。すると、これまた気持ち悪い笑みを浮かべた姫乙が、椅子から立ち上がりつつ、こう呟いたのであった。
「さてさて、2年4組のみなさんはぁ、何を企んでいるのでしょうねぇ――」
【Go to next homeroom】
「確かにぃ、しかし彼女はそこまで愚かではありませぇん。迂闊にぃ、それこそ露骨に取り入るかのように体を売るような真似はしませんよ」
姫乙はそこで言葉を区切ると、小さなテーブルを挟んだ向こう側のほうへ手を差し出した。どうやら、座れという意味らしい。
てっきりさっさと始めてしまうものだと思っていたのだが、そうではないらしい。姫乙はかたわらに置いてあった鞄に手を伸ばすと、資料らしきものを取り出す。
「何か飲み物はぁ? お酒は20歳になってから――なんてのは、便宜上のものであってぇ、未成年でもガンガン飲んでるでしょう? それに関しては、大人も口うるさく言わないしぃ、国も特に対策をしませぇぇぇん。なぜだか分かりますかぁ?」
小さな冷蔵庫を漁りながら問うてくる姫乙。彼女が黙ったままでいると、彼は可愛らしいカクテルのようなものを取り出しつつ、再び口を開いた。
「酒税により国が潤うからですぅ。人間ってのは愚かなもので、ひとたび快楽を覚えてしまえばぁ、それを忘れられなくなるのですぅ。煙草に然りぃ、酒に然りぃ、セックスに然りですぅ。ですからぁ、私は以前よりセックスにも税金をかけろと言っているのですがねぇ。まぁ、それはやりすぎですかねぇ」
カクテルが彼女の前に置かれる。それはアルコールなんて入っていないに等しいカクテルだったが、あまりお酒を飲み慣れない彼女からすれば、それは充分すぎるほどに酒だった。
「さてぇ、越井香純さぁぁあん。資料によりますと、中学時代と現在ではかなりの変貌ぶりのようですぅ。お互いに親友だと思っていたはずの同級生、進藤舞さんともぉ、高校に入ってから疎遠になっているようですねぇ。確かにぃ、あなた達の間にはギクシャクとしたものが垣間見えていましたねぇ」
舞は中学校時代の大親友。よく、一緒にアニメのイベントなどに通っていたものだ。アニメのキャラクターに本気で恋をしてみたり――なんてこともしていた。それが世間一般からズレた認識だと知ったのは、きっと中学を卒業するちょっと前だった。
「そんなことはどうでもいいしさ。そろそろベッドに行かない?」
缶入りのカクテルを一気に飲み干してしまうと、彼女――香純は姫乙をベッドに誘う。すると、これまた気持ち悪い笑みを浮かべた姫乙が、椅子から立ち上がりつつ、こう呟いたのであった。
「さてさて、2年4組のみなさんはぁ、何を企んでいるのでしょうねぇ――」
【Go to next homeroom】
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
終焉の教室
シロタカズキ
ホラー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。
そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。
提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。
最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。
しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。
そして、一人目の犠牲者が決まった――。
果たして、このデスゲームの真の目的は?
誰が裏切り者で、誰が生き残るのか?
友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。
【完結】知られてはいけない
ひなこ
ホラー
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。
他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。
登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。
勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。
一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか?
心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。
(第二回きずな文学賞で奨励賞受賞)

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる