糾弾ホームルーム! ―ぼくたち、わたしたちの主張―

鬼霧宗作

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それぞれの週末【2】

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 もちろん、わけの分からないことに突如として巻き込まれてしまったのだから、混乱はあった。でも、心のどこかで安堵してしまった自分がいたのだ。

 これでクラスがバラバラになってくれれば、中途半端な立ち位置で必死に踏ん張る必要もない。あわよくば現状を全てリセットできるかもしれない。緊急事態の状況下におかれているのだから、家に帰るなり義務的にSNSを開いて、みんなの明らかな自己満足の投稿に、いいねをつけて回らなくて済む。――自分が死んでしまうなんて考えてもいなかった。だって、自分はアベンジャーに選定されていたのだから。

 今思い返してみれば、危険な橋を渡ったものだと思う。アベンジャーに選定されたことと、命の保証は決してイコールでは結ばれない。だが、自分は特別な立場だから、大丈夫であろうという変な根拠があった。きっと、彼女と同じように考えていたクラスメイトは大勢いたはずだ。だからこそ、姫乙が用意した牛乳にも手を伸ばした。喉が乾いていたというのもあるが、心のどこかで自分だけは安全であるという根拠がなかったら、牛乳を手に取ることすら躊躇ためらったのかもしれない。

 結果、自分は絶対に安全だと信じて疑わなかったアベンジャー達が死んだ。それは完全に運任せであり、誰が死んでもおかしくはなかった。むろん、彼女が毒入りの牛乳を飲む可能性だって、充分にあったはずなのだ。けれども、その時は自分がアベンジャーだからこそ、死なないように配慮されているのだ……程度にしか考えていなかった。まさか全員がアベンジャーだったなんて、本当に馬鹿げた話だ。

 シャワーは何も洗い流してくれなかった。体の汚れは洗い流してくれるかもしれないが、彼女の心の奥底にこびりついている汚れは、生温いシャワー程度では決して洗い流せはしなかった。

 簡単に体を拭くと、とりあえずバスタオルを体に巻きつける。

「ねぇ、制服着たほうがいい?」

 彼女が問うと、しばらく間を置いてから「もちろぉぉん」という間延びした返事が飛んでくる。彼女はリクエストに応えて制服へと着替えた。そして、姫乙の待つベッドルームへと戻った。

「それにしてもぉ、よろしくありませんねぇ。女子高生たるものが、たかだか数万円程度で自分の体を売るのですぅ。なんとも馬鹿げた話だと思いませんかぁ?」

 そう言いつつも、下から上まで順に舐め回すかのごとく、姫乙の視線が絡みついてくる。

「でも、ウチがもし大槻だったら、もう飛びついてるでしょ?」
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