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#2 ぼくとわたしと禁断の数字【エピローグ】

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 人間とはどうして差をつけたがるのだろうか。人間はどうしてランクをつけたがるのか。下の人間を見下して優越感を得るためか、それとも上を見上げて己を磨くためか。とにもかくにも、日本人は特にランクにこだわる。順位にこだわる。学校では常にテストで順位をつけられ、優劣を大々的に晒される。社会に出たら出たで仕事ぶりで優劣をつけられ、プライベートにおいても優劣をつけたがる。

 だからこそのカースト。それは点数などでは決して表すことのできない、人間そのものを評価するシステムなのかもしれない。ただし、その点数の付け方に正解はなく、それぞれの主観によるものが強い。ゆえに、カースト的な立場の違いがあっても、いざ真っ向から向かい合ってみると、案外気が合ったりする。なんとも皮肉な話ではあるが、安藤達のクラスはこの非日常的な出来事のせいで、ようやくスクールカースト制度の不確かさに気付かされたのである。

「できることなら、こんなことになる前に気付きたかったね――」

 香純の一言は切実であった。彼女が自らの地位を確保するために、必死になってギャルグループから外されまいとしていたのを見ていたから。それが露骨に目に見えてしまっていたから。だからこそ、今となっては、そんなことにこだわっていた自分が馬鹿げていたように思えてしまうのかもしれない。

「でも、この段階で気付くことができた。姫乙だって、まさか私達が今の段階で結託するとは思っていないだろうし、全員がアベンジャーだなんてふざけたことに気付かれたとも思っていないはず。途中で気付けただけでも、私達に分があるはずよ」

 芽衣の言う通り、今の安藤達には大きなアドバンテージがある。クラスが一丸となって動き始めたというアドバンテージがだ。全員がアベンジャーだと分かったことにより、疑い合う必要もなくなったし、自分だけが特別な存在であると負い目を感じる必要もない。上も下もなく、平等な立場で現状を見つめることができているのだ。

「それに加えて、学校内でリアルタイムに連絡が取り合えるように情報網を整備すれば、さらに動きやすくなるはずよ」

「ちょっと待った。学校内で連絡を取り合うことは、確かできなかったはずだよ」

 淡々と続けていた芽衣に対して、手を挙げたのは小宮山だった。まるで、そのタイミングを狙っていたかのようだった。確かに小宮山の言う通り、学校で連絡を取り合うことはできなかったはずだ。姫乙がそんなことを言っていた。
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