糾弾ホームルーム! ―ぼくたち、わたしたちの主張―

鬼霧宗作

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#2 ぼくとわたしと禁断の数字【エピローグ】

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「これらを踏まえた上で、もう一度だけみんなに聞くわ――。いい? 現状においてアベンジャーであることは不利ではない。アベンジャーだったからって、私達からの扱いが変わるわけでもない。だから、正直に手を挙げて欲しい。自分はアベンジャーであるという人がいたら、正直に答えて欲しいの」

 芽衣の推測。このクラスを冷静に分析した結果の根拠。彼女が現状をぶっ壊そうと言い出した。そのための準備もしなければならないだろうし、体育祭でも文化祭でも、球技大会はおろかちょっとした課外授業でさえ、ひとつにまとまったことのないクラスがひとつにまとまらなければならないのだ。厳密に言うと星野崎が仲間外れになっているわけだが、少なくともここにいるメンバーはひとつになる必要がある。

 これは信頼。ちぎりなのだ。互いに互いを信頼するという絆の提示。それはこの先の展開すらも暗示しており、ここでの結果はそのまま顛末てんまつへと直結することであろう。

「それじゃあ、せーので手を挙げて。私は自分がアベンジャーであることをすでに告白しているから、もうこの時点で手を挙げさせてもらうわ」

 芽衣はそう言うと手を挙げる。どこからか溜め息のようなものが漏れ出したような気がした。柱時計の音がいよいようるさく感じられた。

「ちょっと席を外してもらえる?」

 小雪が小声で指示を出し、家政婦達は是非さえ問わずに黙って部屋を後にする。それをしっかりと見送ってから、芽衣が小さく息を吸った。そして約束通りに音頭を取った。

 これは信頼、契約、協力の証。それを提示しないことは――クラスのみんなに背を向けることを意味する。

「せーのっ!」

 必要以上に芽衣が声を張り、それに触発されるかのごとく――安藤は手を挙げた。

 個人面談にて呼び出され、この事実を知らされた時、ショックだったというよりも「あぁ、やっぱり」という印象だった。自分がクラスにとって復讐できるアベンジャーという存在だと知らさせて、別に嬉しいとは思わなかったし、困ったとも思わなかった。クラスのカースト制度において下位にいる人間なら、与えられて当然の権利程度にしか受け取ることができなかった。目の前で起きていたことが非現実的だったから、自分がアベンジャーであるという事実にも、どこか現実味を持てなかったのかもしれない。

 あなたはアベンジャーです。好き放題にクラスメイトを殺しても結構です。なんてことを急に言われたところで、それを実行に移せる人間など少ないだろう。もちろん、安藤もそうだった。
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