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#2 ぼくとわたしと禁断の数字【糾弾ホームルーム篇】
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安藤の父が声をかけようとするモーションを見せたが、けれども千奈美の父親に向かって何も言ってはやれなかったようだ。さ全ては結果論ではあるが、娘を学校に行かせた結果、無残にも娘は殺されてしまった。ならば、もうひとつの選択肢だった亡命のほうに希望を見出すのは、親として当然ではないだろうか。もしかして亡命させていれば助かっていたかもしれないと夢を見るのは、子を失った親に与えられる、数少ない権利なのかもしれない。
それぞれの両親との再会も束の間。坂崎の両親が来ていないことを気にかけていたのだろう。本田が自分の両親になにかを一言二言告げると、安藤達に向かって「行くぞっ!」と音頭をとった。
「父さん、ごめん。坂崎君を家に送り届けてから帰るよ」
そう言うと父は寂しげな表情を見せたが、小さく溜め息を漏らして頷いた。
「あぁ、分かった――。お前達の好きにすればいいさ」
一同が坂崎のことを守るような陣形を組んでいることに、それぞれの親や関係者は察していたことであろう。自然と生徒のそばを離れるが、しかしたった一人だけ、むしろ自分の子どもに抱きつくようにして抵抗した者がいた。
「どうしてウチの龍斗が人殺しの付き添いなんてしなきゃいけないの? 危ないし、龍斗には関係ないことじゃない!」
ヒステリックな声をあげたのは、教育評論家だかなんだか分からないが、とりあえず安藤のクラスメイトの両親の中ではもっとも知名度が高いであろう星野崎の母親だった。
「ほかの子ども達もどうかしてる! それを止めない親もどうかしてる! あなたがた、自分の子どもが可愛くないの? 大切じゃありませんの? 今や、この子達は全国から注目されているんです。それなのに人殺しを家に送り届ける? どうして? 前みたいに人殺しが袋叩きに遭うのを見たくないから? でもそれをされても文句を言えないほどの酷いことを、その人殺しはしたのよ? どうして人殺しの肩を持つの?」
なんだか訴えかけるような――もっと具体的に言えばテレビを意識した論調に、なんだか不快感を抱いた。蛙の子は蛙ということか。
「人殺しじゃねぇ――こいつの名前は坂崎朝陽。普段は虫さえ殺せねぇような優しい奴なのに、強要されて仕方がなく人殺しになった俺の親友だ。文句あんのか?」
そこでぽつりと呟いたのは本田だった。その声は一同の注目が集まり、そしてマスコミのカメラが向けられるとさらにヒートアップした。坂崎のことを全国に知ってもらうチャンスだと、本田は思ったのかもしれない。
それぞれの両親との再会も束の間。坂崎の両親が来ていないことを気にかけていたのだろう。本田が自分の両親になにかを一言二言告げると、安藤達に向かって「行くぞっ!」と音頭をとった。
「父さん、ごめん。坂崎君を家に送り届けてから帰るよ」
そう言うと父は寂しげな表情を見せたが、小さく溜め息を漏らして頷いた。
「あぁ、分かった――。お前達の好きにすればいいさ」
一同が坂崎のことを守るような陣形を組んでいることに、それぞれの親や関係者は察していたことであろう。自然と生徒のそばを離れるが、しかしたった一人だけ、むしろ自分の子どもに抱きつくようにして抵抗した者がいた。
「どうしてウチの龍斗が人殺しの付き添いなんてしなきゃいけないの? 危ないし、龍斗には関係ないことじゃない!」
ヒステリックな声をあげたのは、教育評論家だかなんだか分からないが、とりあえず安藤のクラスメイトの両親の中ではもっとも知名度が高いであろう星野崎の母親だった。
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