211 / 468
#2 ぼくとわたしと禁断の数字【糾弾ホームルーム篇】
95
しおりを挟む
とにもかくにも時間がない。ただ、みんなから託された以上、責任を持って安藤はやるべきことをやるだけだ。言うべきことを言うだけだ。
坂崎と再び目が合った。普段はヒエラルキーの下位のほうにいる安藤は、ごく普通のクラスとして機能していた時は、たまに坂崎からいじられる程度の間柄だった。まさか、いじり倒していた安藤に告発されるなんて坂崎も思っていなかっただろうし、安藤自身もまさかこんなことをすることになるとは思いもしなかった。
「坂崎君――君だっ!」
これがクラスの総意。全員が納得して導き出した答え。安藤の推測が全て正しければ、坂崎は巧妙な策をしっかりと打っていたし、クラスメイトを欺くための手段まで用意していたことになる。そこには、確実にアベンジャーとしての役割を果たそうとした意思が伺える。
姫乙が驚いたかのように目を丸くする。それはどうせポーズであり、いたずらに安藤達を不安にさせようとする演技でしかない。答えは――坂崎に決まっている。
「みなさぁぁぁん。本当にそれでいいのですかぁ? 正直なところぉ、まだロスタイムもかなりありますしぃ、考え直してみたらいかがですかぁ?」
公平なスタンスを徹底するのであれば、この場で答えを揺るがすような真似はしないほうがいいような気がするのであるが、姫乙の人間性を今さら疑ったところで仕方がない。不安そうな視線がいくつか安藤のほうへと向けられていたことには気付いていたが、しかし「大丈夫。心配いらない――」と一蹴した。
「運命の瞬間です。彼らの出した答えは正しいのか。それとも間違っているのか。もはや、ここまできたら彼らの生還を願わずにはいられません。カメラの向こう側のみなさまも同じ想いではありませんでしょうか?」
アンジョリーヌがカメラに向かって訴えかける。彼女もまた平等な立場から報道をするべきなのであろうが、世論を味方にするかのごとく、さりげなく安藤達のことを応援してくれる。
「姫乙、お得意のジャッジメントだ。僕達の答えが正しいのか、それとも間違っているのか――ジャッジしてくれ」
揺さぶりをかけられたところで答えは変わらない。だから、後は姫乙からの判定を待つのみ。姫乙は小さく溜め息を漏らすと、席から離れて教壇に立った。
「それではぁ、どうやら答えが提示されたようですのでぇ、これより判定へと移りますぅ。果たして【ナンバーキーパー】の正体は坂崎君だったのか。それとも別の人間が【ナンバーキーパー】だったのか……」
坂崎と再び目が合った。普段はヒエラルキーの下位のほうにいる安藤は、ごく普通のクラスとして機能していた時は、たまに坂崎からいじられる程度の間柄だった。まさか、いじり倒していた安藤に告発されるなんて坂崎も思っていなかっただろうし、安藤自身もまさかこんなことをすることになるとは思いもしなかった。
「坂崎君――君だっ!」
これがクラスの総意。全員が納得して導き出した答え。安藤の推測が全て正しければ、坂崎は巧妙な策をしっかりと打っていたし、クラスメイトを欺くための手段まで用意していたことになる。そこには、確実にアベンジャーとしての役割を果たそうとした意思が伺える。
姫乙が驚いたかのように目を丸くする。それはどうせポーズであり、いたずらに安藤達を不安にさせようとする演技でしかない。答えは――坂崎に決まっている。
「みなさぁぁぁん。本当にそれでいいのですかぁ? 正直なところぉ、まだロスタイムもかなりありますしぃ、考え直してみたらいかがですかぁ?」
公平なスタンスを徹底するのであれば、この場で答えを揺るがすような真似はしないほうがいいような気がするのであるが、姫乙の人間性を今さら疑ったところで仕方がない。不安そうな視線がいくつか安藤のほうへと向けられていたことには気付いていたが、しかし「大丈夫。心配いらない――」と一蹴した。
「運命の瞬間です。彼らの出した答えは正しいのか。それとも間違っているのか。もはや、ここまできたら彼らの生還を願わずにはいられません。カメラの向こう側のみなさまも同じ想いではありませんでしょうか?」
アンジョリーヌがカメラに向かって訴えかける。彼女もまた平等な立場から報道をするべきなのであろうが、世論を味方にするかのごとく、さりげなく安藤達のことを応援してくれる。
「姫乙、お得意のジャッジメントだ。僕達の答えが正しいのか、それとも間違っているのか――ジャッジしてくれ」
揺さぶりをかけられたところで答えは変わらない。だから、後は姫乙からの判定を待つのみ。姫乙は小さく溜め息を漏らすと、席から離れて教壇に立った。
「それではぁ、どうやら答えが提示されたようですのでぇ、これより判定へと移りますぅ。果たして【ナンバーキーパー】の正体は坂崎君だったのか。それとも別の人間が【ナンバーキーパー】だったのか……」
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに自分の恋も叶えちゃいます!
MEIKO
恋愛
最近まで死の病に冒されていたランドン伯爵家令嬢のアリシア。十六歳になったのを機に、胸をときめかせながら帝都学園にやって来た。「病も克服したし、今日からドキドキワクワクの学園生活が始まるんだわ!」そう思いながら一歩踏み入れた瞬間浮かれ過ぎてコケた。その時、突然奇妙な記憶が呼び醒まされる。見たこともない子爵家の令嬢ルーシーが、学園に通う見目麗しい男性達との恋模様を繰り広げる乙女ゲームの場面が、次から次へと思い浮かぶ。この記憶って、もしかして前世?かつての自分は、日本人の女子高生だったことを思い出す。そして目の前で転んでしまった私を心配そうに見つめる美しい令嬢キャロラインは、断罪される側の人間なのだと気付く…。「こんな見た目も心も綺麗な方が、そんな目に遭っていいいわけ!?」おまけに婚約者までもがヒロインに懸想していて、自分に見向きもしない。そう愕然としたアリシアは、自らキャロライン嬢の取り巻きAとなり、断罪を阻止し婚約者の目を覚まさせようと暗躍することを決める。ヒロインのヤロウ…赦すまじ!
笑って泣けるラブコメディです。この作品のアイデアが浮かんだ時、男女の恋愛以外には考えられず、BLじゃない物語は初挑戦です。貴族的表現を取り入れていますが、あくまで違う世界です。おかしいところもあるかと思いますが、ご了承下さいね。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~
猫野 にくきゅう
ファンタジー
国を追放された聖女が、隣国で幸せになる。
――おそらくは、そんな内容の小説に出てくる
『嫌われ役』の王子に、転生してしまったようだ。
俺と俺の暮らすこの国の未来には、
惨めな破滅が待ち構えているだろう。
これは、そんな運命を変えるために、
足掻き続ける俺たちの物語。
愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた
迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」
待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。
「え……あの、どうし……て?」
あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。
彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。
ーーーーーーーーーーーーー
侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。
吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。
自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。
だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。
婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。
※基本的にゆるふわ設定です。
※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます
※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。
※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。
※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ソラのいない夏休み
赤星 治
ミステリー
高校二年の楸(ひさぎ)蒼空(そら)は、他校で同年の幼馴染み、三枝(さえぐさ)日和(ひより)から夏休みの自由研究で双木三柱市(ふたきみつはしらし)で有名な四十二の都市伝説調査に誘われる。
半ば強引ながらも参加させられ、猛暑の中歩き回ることを想像して気が乗らない蒼空の元に、三枝日和が失踪した報せが入る。
神隠しのような日和の失踪を、都市伝説調査で参加していた日和の同級生・御堂(みどう)音奏(かなで)と探る最中、クラスメートの死の予言を聞いた蒼空の同級生・涼城(すずしろ)夏美(なつみ)と協力して調査することになる。
四十二の都市伝説に纏わる謎は、やがて蒼空を窮地に追い詰める。
【本作において】
本作は、以前エブリスタで投稿していた作品を加筆修正(加筆修正箇所はかなり多いです)したものです。物語の内容と結末は同じです。ご了承くださいませ。
この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR
ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。
だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。
無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。
人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。
だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。
自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。
殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる