糾弾ホームルーム！ ―ぼくたち、わたしたちの主張―

＃2 ぼくとわたしと禁断の数字【糾弾ホームルーム篇】

34

「犯人が自分達の中にいるものだと思わせておきながら、関係者を装って事件に関与していた不登校の郷野が犯人だった。それと似たようなことをしようとしていたってこと？」

　そこで前回の事件を引き合いに出したのは香純だった。彼女にとって初めての発言らしい発言。その問いかけのような言い草は、まるで真綾に向けられているような気がした。なんだか香純が少しばかりおどおどしているようにも見える。残念ながら真綾はそっぽを向き、その代わりに伊勢崎が答える形になった。チラチラとカメラ目線になるのを、なんとかできないのであろうか。

「まぁ、そういうことになるね。自分達の中にいると思っていた犯人が、実は兵隊に混じっていた。これは、すでに僕達が一度経験していることだ。そして、人間というのは一度経験したものが二度連続で続くとは考えない。簡単に言ってしまえば、同じようなトリックが二度使われるなんて思いもしない。それを逆手に取ろうとしたってところかな。これで犯人が後になってから、兵隊に混じって登場したら傑作だよ」

　つまり、細かい違いは出てくるものの、前回の事件と同じように犯人をクラスの外へと出して、議論を混乱させようとした可能性があるということか。人間は不思議なもので、一度あったことは連続して二度も続かないと思い込む節がある。それと同様に、まさか二度も同じトリックが使用されるなんて、誰が思うだろうか。もし伊勢崎の言った通りだったとすれば、犯人は上手い具合に逆手を取ったつもりでいたのかもしれない。もっとも、こうして伊勢崎に見抜かれてしまったわけだが。

「伊勢崎君、発想としては悪くないわ。でも――その可能性は、かなり低くなると思われるわ」

　ほとんど伊勢崎のオンステージであったが、そこに芽衣がブレーキをかける。伊勢崎の推論は悪くないし、前回の先走りぶりに比べれば、しっかりと理論立っていると思う。芽衣はそのまま視線を姫乙のほうへと移した。

「姫乙、ひとつだけ確認するわ。今回の場合、ゲームに負けたら即射殺でいいのよね？　銃撃を受けなければならないという曖昧なものではなく、射殺――なのよね？　この辺りのことをはっきりさせて。後になって細かいことは云々と曖昧にごまかすことは許さない。今すぐに答えなさい」

　伊勢崎の推測を受けて、何か引っかかる部分があるように感じていたのだが、そこを芽衣が真っ先に突いてくれたようだ。当たり前だが、伊勢崎の推論を現実のものとするためには、犯人が射殺されてはならない。銃撃はされても生きていなければならないのだ。