糾弾ホームルーム！ ―ぼくたち、わたしたちの主張―

＃2 ぼくとわたしと禁断の数字【糾弾ホームルーム篇】

18

　人の死なんて全く気にしていない。例え、それが頭の片隅にあったとしても、彼の場合は全く異なった意味合いを持っている。お国のために命を捧げる行為は、名誉あるものだと考えているのであろう。かつての戦争においても、そのような思考を抱きつつ死んでいった国民が大勢のいたそうだが、果たしてどれだけの人が、本心からそう思いながら死ねたのであろうか。きっと、ほとんどの人が「死にたくない！」と心の中で叫んでいたのではないか。今の大日本帝国政府が掲げているものも、果たしてどれだけ国民に伝わっているのか。大人しく従っているのは、単純に反逆罪扱いされたくないだけということに、いつになったら気付くのであろうか。

「番場君と渡辺君につきましてはぁ――見事なまでにモブキャラでしたぁ。まるで取って付けたような設定が彼らにもあったようですがぁ、初っ端から目立てなかった時点でアウトぉ。もう、どう考えてもぉ、死んで然るべき面子ですよねぇ」

　安藤は姫乙のことをじっと見据える。姫乙の場合は、人の死を名誉とさえ捉えていないのかもしれない。そうでなければ、ここまで死んでしまった人間を馬鹿にはできないだろう。自分の意思とは別に膝が震えていることに気付いて、それをなんとか止めようとした。この状況に本能的な恐怖を感じているのか、それとも姫乙という男の狂気にあてられて、体が毒されてきたのか。できることならば前者であって欲しい。

「福岡纏さんも惜しかったですねぇ。いやいや、頑張れば良いポジションまで行けたかもしれませんけどぉ、このクラスには妙に勘違いしたギャルギャルしいのが多いのでぇ、どうしても被るんですよぉ。もちろん、性格などは全く異なるのでしょうがぁ、外見的にキャラが被っている時点で死んで然るべきですよねぇ」

　そう言って姫乙が視線を往復させたのは、明らかに真綾と香純の間だった。安藤のチームであるＣチームに属しているのが真綾で、本田率いるＢチームに属しているのが香純だ。Ａチームにいた纏は無残にも殺害されてしまったわけだから、いよいよ生き残ったギャルグループのメンバーは、真綾と香純になる。まだ両者のキャラが被っている――と姫乙は言いたいのであろう。

「それにしても、彼女の最期を見ましたか。姫乙、絶対に忘れない。少なくとも、数週間くらいは忘れない。最期の最期に安堵の表情を浮かべた小巻澤さんの姿を――絶対に数日くらいは忘れません！」