猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定4 なぜウグイスは鳴かなかったのか【エピローグ】

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「いいんじゃないですか? 創作物の中には、ごく一般人に事件の捜査内容をペラペラと喋ってみたり、素人が首を突っ込んでいるのに注意ひとつすらしない刑事が描かれていたりしますから。きっと、創作物の中は創作物だと割り切ってもらえますよ」

 よくよく考えてみれば、いわくという特殊なものを取り扱い、それを査定して買い取る――なんて古物商もまた、いかにも創作された設定のようではないか。それらをモデルにしたいというのであれば、ちょっと読んでみたいような気もする。

「ってことはぁ、作中に俺も出てきたりするわけぇ?」

 いまだに魂と生気が戻らぬ一里之は、なんとも間抜けな声で問うてくる。

「それは、書かれる方次第でしょうけど――まぁ、決して安くはない査定手数料をいただいたわけですし、もしかするとお店の宣伝になるかもしれませんから、あちらの申し出を飲み込むつもりでいます」

 ホームページを作成してもらい、そのホームページをきっかけにして出来た縁だ。少しは店の宣伝にもなるだろうし、悪くはない提案だと千早は思っていた。

「ちなみにあれですか? 紙媒体で出版されるのですかねぇ?」

 班目の言葉に千早は苦笑い。小さく首を振ると「いえ、ウェブ上での公開です」とぽつり。一里之が少し溜めを作ってから「――なんだよぉ。ウェブかよぉ」と、大きく溜め息を漏らした。早く魂が戻ってきて欲しいものである。なんだか、今日の一里之は扱いにくい。

「まぁ、最近は大手のウェブ小説サイトも多いですからねぇ。モデルとして書いてもらえるのであれば、現実よりも格好良く書いてもらいたいものですねぇ」

 実際のところ、この店をモデルにしたところで、どんな作品になるのかは分からない。ほんの少し怖いような気もするが、しかし怖いもの見たさというか、どんな風になるのか気にもなる。

「実際に班目様が登場するかどうかはあちら次第ですし、私達が口を出せることでもありませんから。その辺りは実際に公開されてのお楽しみ――というところですね」

 空になった班目と一里之のグラスに麦茶を注いでやる。夏もあと少しで終わり、今度は秋がやってくる。

「ちなみによぉ、どこのウェブ小説サイトで公開されるとか、もう決まってたりするのか?」

 魂は抜けていても、もしかすると自分も作品のモデルになるかもしれないという期待みたいなものがあるのだろうか。一里之が気の抜けた声で問うてくる。
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