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査定4 なぜウグイスは鳴かなかったのか【解答編】
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班目の言葉に頷いた。とどのつまり、彼の言う通りなのである。確かに、飯山と竹藤は耳が聞こえない。しかしながら、大家と争ったことで、音を立ててしまったという事実は認識はできる。それは、耳からの情報ではなく、これまで生きてきたなかで培った知識で補填するような形。お皿を落としてそれが割れれば、落とした音やお皿が割れる音は聞こえなくとも、何かしらの音を立てたことは認識できる。お皿が割れる際に音を発するということを、自然と生きていくなかで知識として吸収しているからだ。
「班目様のおっしゃる通りです。もし、飯山さんや竹藤さんが犯人ならば、大家を殺害した後に部屋を物色するなんて真似はできないのです。大家と争ってしまった際に音を立ててしまったことは間違いない。だから、その物音を聞いて田戸さんが駆けつけてくる恐れがある。飯山さんと竹藤さんのいずれかが犯人ならば、大家を殺害した時点で、さっさと部屋を後にしたはずなんですよ。でも、実際のところ犯人は、大家を殺害した後に部屋を物色しています。それはなぜなのか――大家の部屋で争い、例え物音を立てても、誰も駆けつけないことを知っていたからです。つまり、耳の聞こえない飯山さんと竹藤さんが駆けつけることはないと分かっていたからこそ――田戸さんは大家を殺害した後に部屋を物色することができたのです」
これが事件の真相。当然ながらフロッピーディスクに残された情報だけでは、犯人が大家の殺害にいたった動機などは分からない。それに、ほぼ証拠不十分という状況で飯山が逮捕されたというのも、実に杜撰なのではないかと思う。けれども、限られた情報からたどり着ける答えは……すなわち、田戸が犯人であるという答えなのである。
「容疑者3人のうち、実は2人がろうあ者であり、その事実が判明すると同時に犯人が明らかになる。なんというか――よくできた事件ですねぇ」
班目がぽつりと漏らし、千早は「まったくもって同感です」とスマートフォンを手に取る。実は、この事件の査定を進めるなかで、千早はちょっとした違和感を抱いていた。それを竹藤に確かめなければならない。
――竹藤様。もうひとつだけお聞かせください。あなたはなぜ、ご自身と飯山様がろうあ者であることを伏せていたのでしょうか?
メールを打つとそれを送信。この事件は飯山と竹藤がろうあ者であると判明してしまえば、後はロジカルに答えが導き出される。最初にその情報さえ提示されていれば、簡単に答えが出たはずなのだ。
「班目様のおっしゃる通りです。もし、飯山さんや竹藤さんが犯人ならば、大家を殺害した後に部屋を物色するなんて真似はできないのです。大家と争ってしまった際に音を立ててしまったことは間違いない。だから、その物音を聞いて田戸さんが駆けつけてくる恐れがある。飯山さんと竹藤さんのいずれかが犯人ならば、大家を殺害した時点で、さっさと部屋を後にしたはずなんですよ。でも、実際のところ犯人は、大家を殺害した後に部屋を物色しています。それはなぜなのか――大家の部屋で争い、例え物音を立てても、誰も駆けつけないことを知っていたからです。つまり、耳の聞こえない飯山さんと竹藤さんが駆けつけることはないと分かっていたからこそ――田戸さんは大家を殺害した後に部屋を物色することができたのです」
これが事件の真相。当然ながらフロッピーディスクに残された情報だけでは、犯人が大家の殺害にいたった動機などは分からない。それに、ほぼ証拠不十分という状況で飯山が逮捕されたというのも、実に杜撰なのではないかと思う。けれども、限られた情報からたどり着ける答えは……すなわち、田戸が犯人であるという答えなのである。
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