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査定4 なぜウグイスは鳴かなかったのか【解答編】

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「半分正解――と言ったところですね。でも、考えてみてください。外を経由するにしたって、大家が勘付いてしまう可能性はあります。ぬかるんだ地面を歩く音、窓を開ける際の音など、廊下を回避したから大丈夫というわけではありません。それに、ドアを開ければすぐ部屋に入ることができるのに対して、窓から中に入るとなると、足をかけて中に入る必要があり、それが手間にもなります。どちらを経由しても大家に勘付かれてしまう恐れがあるのだとしたら、ドアから直接部屋に入ったほうが良いとも思えませんか?」

 ちょっといじわるな返しかただと自分でも思う。しかし、大家に勘付かれてしまうかもしれないから――という理由は、犯人が外を経由した決定的な理由とはならないのだ。もっと明確な理由があって、犯人は外を経由しなければならなかったのだから。

「確かにそうですねぇ。音に敏感だった大家ならば、外経由でも勘付いていた可能性は高いでしょう。どうせ勘付かれてしまうのであれば、廊下のほうを経由したほうが良いようにも思えますねぇ」

 宙に視線を投げたまま動きを止める班目。思考することをやめてしまったわけではないだろうが、少しばかり詰まってしまったようだ。スマートフォンに視線を落とすが、いまだに竹藤からの返信はない。班目とのあいだにちょっとした沈黙が訪れ、それを破るかのごとく千早は次の話題を切り出した。

「それでは、この問題は一旦保留にしておいて、次のポイントについて考えてみましょう。これは班目様も気づいておられましたが、このフロッピーディスクにデータを残した本人であろう飯山さんの文章なのですが――どうにも堅苦しい。私はなんとなく回りくどいような印象を受けました。ですが、それは決して飯山さんの文章能力に問題があったわけではありません。ある理由があって、私達にはそう感じてしまうような文章になってしまっているだけだったのです」

 班目が途中で指摘した飯山の文章能力。この一見して事件と無関係に思える事実が、実は重大な鍵を握っている。

「確かに、どうも堅苦しいんですよねぇ。でも、それが飯山さんの文章能力の問題ではないとして……一体、どんな理由があるのですか?」

 班目が問うてくる。飯山の残した日記のような文章――これには、日常でごくごく当たり前のように使われている、あるものが欠如しているのである。それはもはや、不可抗力としか言いようがないだろう。
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