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査定4 なぜウグイスは鳴かなかったのか【問題編】
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千早はパソコンの前へと向かい、改めて飯山が残した日記に目を通す。なるほど、だからこそ文章が堅苦しいように思えたのか。それは、ある意味では仕方のないことだったのかもしれない。
容疑者は飯山、竹藤、田戸の3人。足跡はこの3人の部屋から大家の部屋へと続いており、誰が大家の部屋に向かったのかは分からない。犯行自体も決して計画的だとは思えなかった。なぜなら、現場にあったであろう電気コードが凶器として使われているのだから。
動機は横柄な大家の性格からして全員にあったと思われる。やはり、ざっと事件のあらましを考察しただけでは、誰が犯人なのか分からない。誰にでも犯行は可能だったし、誰が犯人だったとしてもおかしくはない。しかし、ある一点……根本的なある事実にさえ気づければ、犯人は一気に絞られる。それこそ3人から1人にだ。
「どうしました? そんな怖い顔をしながらパソコンを眺めて――」
自分の指定席に戻った班目の言葉に、千早はモノクルをはめながら言った。
「実に月並みな台詞になってしまいますが、班目様――お手柄です。おかげで、無事にフロッピーディスクの査定も終わりそうです」
雨はなおさらに激しくなり、どうやら風まで出てきたらしい。まるでフロッピーディスクに残されていた事件を再現しようとしているかのごとく。
「――え? 私、そんな手がかりになるようなことを口にしましたか?」
本人にその自覚はないのであろうが、間違いなく班目の一言で、千早は事件の真相にたどり着くことができたのだ。
「はい、決定的な手がかりを口にしてくださいました。今回の依頼人は遠方の方で、しかもメールでしかやり取りをしてくれません。外はご覧のように土砂降りのようですし、せっかくですから班目様――どうかお付き合いを」
依頼主である竹藤は、基本的にメールでしかやり取りをしてくれない。一度、電話でやり取りをしようと提案したが、しかしメールでのやり取りを一貫して主張してきた。よって、査定した結果を淡々とメールで伝えることになるのだろうが、すぐにレスポンスがあるとも限らない。
見計らったかのごとく降り出した雨。事件解決の立役者となってくれた班目。彼に査定結果を伝えない理由はなかった。
「なんだか良く分かりませんけど、自分の持ち込んだ事件ではないというのは新鮮ですねぇ。私で構わないのであれば、喜んでお聞きしましょう。いわくの全貌をね――」
班目の言葉に千早が頷くと、実にタイミング良く雷が轟いたのであった。雨は当分やみそうにない。
容疑者は飯山、竹藤、田戸の3人。足跡はこの3人の部屋から大家の部屋へと続いており、誰が大家の部屋に向かったのかは分からない。犯行自体も決して計画的だとは思えなかった。なぜなら、現場にあったであろう電気コードが凶器として使われているのだから。
動機は横柄な大家の性格からして全員にあったと思われる。やはり、ざっと事件のあらましを考察しただけでは、誰が犯人なのか分からない。誰にでも犯行は可能だったし、誰が犯人だったとしてもおかしくはない。しかし、ある一点……根本的なある事実にさえ気づければ、犯人は一気に絞られる。それこそ3人から1人にだ。
「どうしました? そんな怖い顔をしながらパソコンを眺めて――」
自分の指定席に戻った班目の言葉に、千早はモノクルをはめながら言った。
「実に月並みな台詞になってしまいますが、班目様――お手柄です。おかげで、無事にフロッピーディスクの査定も終わりそうです」
雨はなおさらに激しくなり、どうやら風まで出てきたらしい。まるでフロッピーディスクに残されていた事件を再現しようとしているかのごとく。
「――え? 私、そんな手がかりになるようなことを口にしましたか?」
本人にその自覚はないのであろうが、間違いなく班目の一言で、千早は事件の真相にたどり着くことができたのだ。
「はい、決定的な手がかりを口にしてくださいました。今回の依頼人は遠方の方で、しかもメールでしかやり取りをしてくれません。外はご覧のように土砂降りのようですし、せっかくですから班目様――どうかお付き合いを」
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「なんだか良く分かりませんけど、自分の持ち込んだ事件ではないというのは新鮮ですねぇ。私で構わないのであれば、喜んでお聞きしましょう。いわくの全貌をね――」
班目の言葉に千早が頷くと、実にタイミング良く雷が轟いたのであった。雨は当分やみそうにない。
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