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査定4 なぜウグイスは鳴かなかったのか【問題編】
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「えっと――このフロッピーディスクを残したのが飯山さんで、フロッピーディスクの査定を依頼されたのが竹藤さんという方でしたっけ?」
班目の言葉に頷きで返すと「自然に考えるのであれば、犯人らしいのは田戸さん――ってことになってしまいますよね。状況的に考えると」と漏らす。それに関して異論はなかった。
「はい、逮捕されたのは飯山さんですが、飯山さんは自らの冤罪を晴らして欲しくてフロッピーディスクを残しました。そして、腐れ縁だという竹藤さんも、過去の事件を解決して欲しいとのことで、私に査定を依頼してきました。だから、ごくごく自然に考えるのであれば、フロッピーディスクで冤罪を訴えた飯山さんと、過去の事件をわざわざ掘り返すような真似をした竹藤さんは――犯人である可能性が低いと思われます。しかしながら、それはあくまでも状況証拠のようなものであって、それを根拠として田戸さんが犯人だったとすることはできません。事件のあらましだけを考えるのであれば、飯山さんにも竹藤さんにも犯行は可能だったわけです。飯山さんが全て真実を書いているとも限りませんし、今回の経緯を抜きに考えれば、竹藤さんが犯人の可能性も充分にあります」
千早がしているのは、フロッピーディスクにまつわるいわくの査定である。当たり前であるが、品物の査定に、それが持ち込まれた経緯までは含まれていない。どんな持ち込み方をされたところで、フロッピーディスクにまつわるいわくの価値は変わらないということだ。ゆえに状況的に考えて――などという査定のやり方はできない。
「残された足跡と、大家の部屋に残された泥にまみれた靴の跡。凶器はおそらく部屋に最初からあったであろう電気コード。犯人がどうして外を経由して大家のところに向かったのかは不明ですが、犯人となり得るのは飯山、竹藤、田戸の3人しかおらず、外部犯の可能性は否定されている――さてさて、一体誰が犯人なんでしょうねぇ」
班目が言うと、急に雷の音が響いた。まるで地響きのようなそれは、空を一瞬にして暗くする。しばらくもしないうちに雨が降り出した。通り雨というやつなのだろうが、かなりの土砂降りだ。わざわざ店の外を眺めに向かった班目が振り返る。
「いやー、これはザーザーと降って来ましたねぇ。申しわけありませんけど、雨が止むまでもうしばらくお邪魔させてもらいますよ」
その言葉を聞いた瞬間のことだった。千早の頭の中でフラッシュバックが発生し、フロッピーディスクの中に残されていた情報が走馬灯のごとく駆け巡る。分かったかもしれない。誰が犯人なのか。そして、どうして犯人は外を経由して大家の部屋に向かったのか――。
班目の言葉に頷きで返すと「自然に考えるのであれば、犯人らしいのは田戸さん――ってことになってしまいますよね。状況的に考えると」と漏らす。それに関して異論はなかった。
「はい、逮捕されたのは飯山さんですが、飯山さんは自らの冤罪を晴らして欲しくてフロッピーディスクを残しました。そして、腐れ縁だという竹藤さんも、過去の事件を解決して欲しいとのことで、私に査定を依頼してきました。だから、ごくごく自然に考えるのであれば、フロッピーディスクで冤罪を訴えた飯山さんと、過去の事件をわざわざ掘り返すような真似をした竹藤さんは――犯人である可能性が低いと思われます。しかしながら、それはあくまでも状況証拠のようなものであって、それを根拠として田戸さんが犯人だったとすることはできません。事件のあらましだけを考えるのであれば、飯山さんにも竹藤さんにも犯行は可能だったわけです。飯山さんが全て真実を書いているとも限りませんし、今回の経緯を抜きに考えれば、竹藤さんが犯人の可能性も充分にあります」
千早がしているのは、フロッピーディスクにまつわるいわくの査定である。当たり前であるが、品物の査定に、それが持ち込まれた経緯までは含まれていない。どんな持ち込み方をされたところで、フロッピーディスクにまつわるいわくの価値は変わらないということだ。ゆえに状況的に考えて――などという査定のやり方はできない。
「残された足跡と、大家の部屋に残された泥にまみれた靴の跡。凶器はおそらく部屋に最初からあったであろう電気コード。犯人がどうして外を経由して大家のところに向かったのかは不明ですが、犯人となり得るのは飯山、竹藤、田戸の3人しかおらず、外部犯の可能性は否定されている――さてさて、一体誰が犯人なんでしょうねぇ」
班目が言うと、急に雷の音が響いた。まるで地響きのようなそれは、空を一瞬にして暗くする。しばらくもしないうちに雨が降り出した。通り雨というやつなのだろうが、かなりの土砂降りだ。わざわざ店の外を眺めに向かった班目が振り返る。
「いやー、これはザーザーと降って来ましたねぇ。申しわけありませんけど、雨が止むまでもうしばらくお邪魔させてもらいますよ」
その言葉を聞いた瞬間のことだった。千早の頭の中でフラッシュバックが発生し、フロッピーディスクの中に残されていた情報が走馬灯のごとく駆け巡る。分かったかもしれない。誰が犯人なのか。そして、どうして犯人は外を経由して大家の部屋に向かったのか――。
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