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査定4 なぜウグイスは鳴かなかったのか【問題編】
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私は内心でどうなることかと思った。実は私がこの下宿にやってきてしばらくした頃のこと。この辺り一帯でわりかし大きめの地震があったのだ。その際、建物の構造にズレが生じてしまったのか、廊下が全体的に沈むようになってしまったのである。元々、改装工事の時に手抜きでもあったのではないか――とは竹藤の言葉だ。私達が日常で使用する分には問題ないのだが、大勢の捜査員が一斉に廊下に乗ったら、床が抜けてしまうのではないかと私は危惧したのだ。確か、私達の外出禁止令が出たのもその頃のことである。廊下の床が抜けるかもしれないし危ないから――と、当時は勝手に大家の優しさに変換していた自分が情けない。
私の心配は杞憂で終わった。目に見えて床が沈んだように見えたものの、床が抜けてしまうなんて事態にはならず、めでたく……と表現するのはおかしいのかもしれないが、捜査員達はそれぞれの部屋の捜査に取りかかった。このような時は令状のようなものが必要なのではないかと思ったのであるが、もう時すでに遅し。もしかすると、実質上の持ち主である母屋の旦那様――広田の父親に許可を取ったのかもしれない。
廊下で立ったまま待っているのも落ち着かないからと、田戸の提案で私達は台所までやってきた。テーブルにはもう冷めてしまったコーヒーや、水気を失って表面が乾いてしまったソーセージと、きっと固くなってしまった目玉焼きなどが、朝と変わらぬ様子で並べられている。パンなんて歯ざわりが悪くなってしまって食べられたものではないだろう。この騒ぎで私達は朝食を食べ損ねてしまっていたわけだが、それに手を伸ばす気にはなれなかった。
「――さっき窓の外を見た。足跡が俺達の部屋の前で途絶えてた。誰なんだ? 誰が大家の部屋に行ったんだ? 大家の部屋で何をした?」
竹藤が私達に向かって不安を吐き出すように疑問を連ねた。誰が殺したんだ――と表現しなかったのは、私達のことを信じたいという彼の想いだったのかもしれない。
「素人がそういうことを考えないほうがいい。今は警察に任せよう」
私達のあいだで疑心暗鬼になるのが嫌だったのであろう。田戸が話を終わらせようとする。
「でも――」
「きっと警察が解決してくれる。私達にできるのは、それを待つことだけだ」
納得いかない様子の竹藤だったが、私が田戸に味方したことで、仕方がないとばかりに小さく頷いた。
こうして警察に任せた結果が、私を追い詰めることになるのだ。この時、竹藤と田戸の両名と追及するべきだったのかもしれない。つまり、犯人は私達の中の誰なのかということを。
――私の部屋から泥まみれの靴が発見された。
私の心配は杞憂で終わった。目に見えて床が沈んだように見えたものの、床が抜けてしまうなんて事態にはならず、めでたく……と表現するのはおかしいのかもしれないが、捜査員達はそれぞれの部屋の捜査に取りかかった。このような時は令状のようなものが必要なのではないかと思ったのであるが、もう時すでに遅し。もしかすると、実質上の持ち主である母屋の旦那様――広田の父親に許可を取ったのかもしれない。
廊下で立ったまま待っているのも落ち着かないからと、田戸の提案で私達は台所までやってきた。テーブルにはもう冷めてしまったコーヒーや、水気を失って表面が乾いてしまったソーセージと、きっと固くなってしまった目玉焼きなどが、朝と変わらぬ様子で並べられている。パンなんて歯ざわりが悪くなってしまって食べられたものではないだろう。この騒ぎで私達は朝食を食べ損ねてしまっていたわけだが、それに手を伸ばす気にはなれなかった。
「――さっき窓の外を見た。足跡が俺達の部屋の前で途絶えてた。誰なんだ? 誰が大家の部屋に行ったんだ? 大家の部屋で何をした?」
竹藤が私達に向かって不安を吐き出すように疑問を連ねた。誰が殺したんだ――と表現しなかったのは、私達のことを信じたいという彼の想いだったのかもしれない。
「素人がそういうことを考えないほうがいい。今は警察に任せよう」
私達のあいだで疑心暗鬼になるのが嫌だったのであろう。田戸が話を終わらせようとする。
「でも――」
「きっと警察が解決してくれる。私達にできるのは、それを待つことだけだ」
納得いかない様子の竹藤だったが、私が田戸に味方したことで、仕方がないとばかりに小さく頷いた。
こうして警察に任せた結果が、私を追い詰めることになるのだ。この時、竹藤と田戸の両名と追及するべきだったのかもしれない。つまり、犯人は私達の中の誰なのかということを。
――私の部屋から泥まみれの靴が発見された。
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