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査定4 なぜウグイスは鳴かなかったのか【問題編】
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田戸に任された私は、狼狽しながらも大家の広田へと駆け寄った。働きもせず、家のこともしていないせいか、貫禄のある太りかたをしている広田は、仰向けになったまま動かない。目は見開かれているが焦点が合っておらず、その眼球は白濁しているように見えた。首にはロープで締めたような跡が残っていた。
――死んでいる。しかも自然死ではなく、何者かの手によって殺されている。
私は念のために広田の首筋に手を当ててみた。冷たくなってしまった首筋から、命の鼓動は感じられなかった。田戸にこの場を任されたわけであるが、私にはなにもできなかった。いや、やろうと思えば心臓マッサージをしたり、人工呼吸したりするくらいはできただろう。しかしながら、それが無駄だと素人でも分かるくらい、広田の体は完全に死体と化していたのだ。もう、魂の抜けきった抜け殻。本能的にそう察することができた。
窓が開いてることに気づいたのは、趣味の悪い赤色のカーテンが揺れていたからだった。部屋に残されている泥のついた靴の跡。もしかすると、何者かが窓から侵入したのかもしれない。そう考えた私は窓際のほうへと向かった。それは、広田の遺体から離れたいと考える逃避行動だったのかもしれない。
足をかけたのであろう。窓枠にも泥が付着しており、窓の外には足跡が伸びていた。台風が近づいていることは知っていたが、窓の外がぬかるんでいることから考えるに、一晩でかなりの雨量があったようだ。窓の外へと伸びる足跡には、雨水が溜まっていた。
窓から身を乗り出し、足跡を目で追いかけてみて、私は我が目を疑った。なんと、足跡は私達の部屋のほうへと伸びていたのだ。もしかすると、広田を殺害した犯人は――私達の中にいるのだろうか。にわかには信じがたいことだったし、信じたくもないことだった。けれども、足跡が敷地の外に出て向かって伸びていることなどはなく、何度確認しても私達の部屋の辺りと、この部屋を往復しているだけだった。
救急車の赤色灯が見えた私は「ここだ」とばかりに手を振った。救急車を呼んだ後、母屋のほうへと走ったのだろう。田戸と母屋の人間――大家の両親が母屋のほうから駆けてくるのが見えた。人の気配を感じて振り返ると、顔色の悪い竹藤が部屋の前で立ち尽くしていた。
広田の両親と田戸が部屋に駆けつけた。私は広田の両親に頭を下げると、入れ違いになる形で部屋を出た。どんな奴であろうとも広田の両親にとっては大切な子どもなのであろう。到着した救急隊員に運び出される広田に付き添う母親の涙が、なぜか私の心をえぐった。
――死んでいる。しかも自然死ではなく、何者かの手によって殺されている。
私は念のために広田の首筋に手を当ててみた。冷たくなってしまった首筋から、命の鼓動は感じられなかった。田戸にこの場を任されたわけであるが、私にはなにもできなかった。いや、やろうと思えば心臓マッサージをしたり、人工呼吸したりするくらいはできただろう。しかしながら、それが無駄だと素人でも分かるくらい、広田の体は完全に死体と化していたのだ。もう、魂の抜けきった抜け殻。本能的にそう察することができた。
窓が開いてることに気づいたのは、趣味の悪い赤色のカーテンが揺れていたからだった。部屋に残されている泥のついた靴の跡。もしかすると、何者かが窓から侵入したのかもしれない。そう考えた私は窓際のほうへと向かった。それは、広田の遺体から離れたいと考える逃避行動だったのかもしれない。
足をかけたのであろう。窓枠にも泥が付着しており、窓の外には足跡が伸びていた。台風が近づいていることは知っていたが、窓の外がぬかるんでいることから考えるに、一晩でかなりの雨量があったようだ。窓の外へと伸びる足跡には、雨水が溜まっていた。
窓から身を乗り出し、足跡を目で追いかけてみて、私は我が目を疑った。なんと、足跡は私達の部屋のほうへと伸びていたのだ。もしかすると、広田を殺害した犯人は――私達の中にいるのだろうか。にわかには信じがたいことだったし、信じたくもないことだった。けれども、足跡が敷地の外に出て向かって伸びていることなどはなく、何度確認しても私達の部屋の辺りと、この部屋を往復しているだけだった。
救急車の赤色灯が見えた私は「ここだ」とばかりに手を振った。救急車を呼んだ後、母屋のほうへと走ったのだろう。田戸と母屋の人間――大家の両親が母屋のほうから駆けてくるのが見えた。人の気配を感じて振り返ると、顔色の悪い竹藤が部屋の前で立ち尽くしていた。
広田の両親と田戸が部屋に駆けつけた。私は広田の両親に頭を下げると、入れ違いになる形で部屋を出た。どんな奴であろうとも広田の両親にとっては大切な子どもなのであろう。到着した救急隊員に運び出される広田に付き添う母親の涙が、なぜか私の心をえぐった。
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