猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定4 なぜウグイスは鳴かなかったのか【問題編】

9

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【2】

【平成11年7月15日 朝】

 前日は早々と不貞寝ふてねしてしまった割に、目を覚ましたのは朝の6時を過ぎた頃のことだった。眠りこけてしまったらしい。7月15日の朝。いつも通りに支度をして会社へと向かうはずだったのに、その日で全てが一変してしまった。

 私の下宿先の朝食は、当番制で作ることになっている。仕事の都合などがあるため、昼食や夕食はおのおので用意することになるのだが、どういうわけだか朝食だけは当番制で作るという決まりになっていたのだ。ちなみに、そのローテーションは下宿人である私、竹藤、田戸の3人で回しており、大家である広田は入っていない。広田は食べて文句を言うほう専門だ。

 その日は私が当番だった。早めに会社に向かう支度をしてしまうと、そのまま共同の台所へと向かう。冷蔵庫にある食材は、下宿の賃料とは別に徴収され、これまた交代制で食材を買い出しすることになっている。このローテーションにも広田は含まれていないし、食材の費用だって出していない。ここの大家という立場を大いに利用して、タダ飯を喰らっていた。

 冷蔵庫から食材を取り出すと、まずはトースターに食パンを放り込む。パンを焼いている間にフライパンを温め、生卵を割った。目玉焼きを作りつつトースターのほうへと気を配る。タイマー式で勝手に止まってくれるのだが、しかし焦がしたことがあるためか妙に気になる。目玉焼きができあがると、それを皿へと移し、今度はウインナーを炒める。それもまたそれぞれの皿へと盛り付けると冷蔵庫に向かい、レタスを取り出す。適当なサイズにちぎり、ドレッシングを添えて出せばサラダの完成だ。レタスを盛り付け、トースターのほうへと目をやると、ちょうどタイマーがゼロになったところだった。

 パンをトースターから取り出し、バターを一緒に出せば朝食の完成。ソーセージにつけるのはケチャップかタバスコか、それとも粒マスタードか。任意で選べるように小皿に出す。ついでにイチゴのジャムも出してやった。コーヒーメーカーでコーヒーを淹れ始めると、頃合いを見計らったかのように、寝間着姿で寝癖までつけた竹藤と、出社する準備は完璧といった具合の田戸が顔を出した。

 竹藤とは腐れ縁であるが、田戸とはこの下宿先で出会った。通訳の仕事をしており、土日を除けば朝から晩まで忙しそうに飛び回っている。それでも、朝食だけは私達と食べる。この場が下宿人達が全員揃う、実に短いコミニケーションの時間だった。大家の広田は余計ではあるが。
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