191 / 226
査定4 なぜウグイスは鳴かなかったのか【問題編】
9
しおりを挟む
【2】
【平成11年7月15日 朝】
前日は早々と不貞寝してしまった割に、目を覚ましたのは朝の6時を過ぎた頃のことだった。眠りこけてしまったらしい。7月15日の朝。いつも通りに支度をして会社へと向かうはずだったのに、その日で全てが一変してしまった。
私の下宿先の朝食は、当番制で作ることになっている。仕事の都合などがあるため、昼食や夕食はおのおので用意することになるのだが、どういうわけだか朝食だけは当番制で作るという決まりになっていたのだ。ちなみに、そのローテーションは下宿人である私、竹藤、田戸の3人で回しており、大家である広田は入っていない。広田は食べて文句を言うほう専門だ。
その日は私が当番だった。早めに会社に向かう支度をしてしまうと、そのまま共同の台所へと向かう。冷蔵庫にある食材は、下宿の賃料とは別に徴収され、これまた交代制で食材を買い出しすることになっている。このローテーションにも広田は含まれていないし、食材の費用だって出していない。ここの大家という立場を大いに利用して、タダ飯を喰らっていた。
冷蔵庫から食材を取り出すと、まずはトースターに食パンを放り込む。パンを焼いている間にフライパンを温め、生卵を割った。目玉焼きを作りつつトースターのほうへと気を配る。タイマー式で勝手に止まってくれるのだが、しかし焦がしたことがあるためか妙に気になる。目玉焼きができあがると、それを皿へと移し、今度はウインナーを炒める。それもまたそれぞれの皿へと盛り付けると冷蔵庫に向かい、レタスを取り出す。適当なサイズにちぎり、ドレッシングを添えて出せばサラダの完成だ。レタスを盛り付け、トースターのほうへと目をやると、ちょうどタイマーがゼロになったところだった。
パンをトースターから取り出し、バターを一緒に出せば朝食の完成。ソーセージにつけるのはケチャップかタバスコか、それとも粒マスタードか。任意で選べるように小皿に出す。ついでにイチゴのジャムも出してやった。コーヒーメーカーでコーヒーを淹れ始めると、頃合いを見計らったかのように、寝間着姿で寝癖までつけた竹藤と、出社する準備は完璧といった具合の田戸が顔を出した。
竹藤とは腐れ縁であるが、田戸とはこの下宿先で出会った。通訳の仕事をしており、土日を除けば朝から晩まで忙しそうに飛び回っている。それでも、朝食だけは私達と食べる。この場が下宿人達が全員揃う、実に短いコミニケーションの時間だった。大家の広田は余計ではあるが。
【平成11年7月15日 朝】
前日は早々と不貞寝してしまった割に、目を覚ましたのは朝の6時を過ぎた頃のことだった。眠りこけてしまったらしい。7月15日の朝。いつも通りに支度をして会社へと向かうはずだったのに、その日で全てが一変してしまった。
私の下宿先の朝食は、当番制で作ることになっている。仕事の都合などがあるため、昼食や夕食はおのおので用意することになるのだが、どういうわけだか朝食だけは当番制で作るという決まりになっていたのだ。ちなみに、そのローテーションは下宿人である私、竹藤、田戸の3人で回しており、大家である広田は入っていない。広田は食べて文句を言うほう専門だ。
その日は私が当番だった。早めに会社に向かう支度をしてしまうと、そのまま共同の台所へと向かう。冷蔵庫にある食材は、下宿の賃料とは別に徴収され、これまた交代制で食材を買い出しすることになっている。このローテーションにも広田は含まれていないし、食材の費用だって出していない。ここの大家という立場を大いに利用して、タダ飯を喰らっていた。
冷蔵庫から食材を取り出すと、まずはトースターに食パンを放り込む。パンを焼いている間にフライパンを温め、生卵を割った。目玉焼きを作りつつトースターのほうへと気を配る。タイマー式で勝手に止まってくれるのだが、しかし焦がしたことがあるためか妙に気になる。目玉焼きができあがると、それを皿へと移し、今度はウインナーを炒める。それもまたそれぞれの皿へと盛り付けると冷蔵庫に向かい、レタスを取り出す。適当なサイズにちぎり、ドレッシングを添えて出せばサラダの完成だ。レタスを盛り付け、トースターのほうへと目をやると、ちょうどタイマーがゼロになったところだった。
パンをトースターから取り出し、バターを一緒に出せば朝食の完成。ソーセージにつけるのはケチャップかタバスコか、それとも粒マスタードか。任意で選べるように小皿に出す。ついでにイチゴのジャムも出してやった。コーヒーメーカーでコーヒーを淹れ始めると、頃合いを見計らったかのように、寝間着姿で寝癖までつけた竹藤と、出社する準備は完璧といった具合の田戸が顔を出した。
竹藤とは腐れ縁であるが、田戸とはこの下宿先で出会った。通訳の仕事をしており、土日を除けば朝から晩まで忙しそうに飛び回っている。それでも、朝食だけは私達と食べる。この場が下宿人達が全員揃う、実に短いコミニケーションの時間だった。大家の広田は余計ではあるが。
0
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―
鬼霧宗作
ミステリー
窓辺野コトリは、窓辺野不動産の社長令嬢である。誰もが羨む悠々自適な生活を送っていた彼女には、ちょっとだけ――ほんのちょっとだけ、人がドン引きしてしまうような趣味があった。
事故物件に異常なほどの執着――いや、愛着をみせること。むしろ、性的興奮さえ抱いているのかもしれない。
不動産会社の令嬢という立場を利用して、事故物件を転々とする彼女は、いつしか【ロンダリングプリンセス】と呼ばれるようになり――。
これは、事故物件を心から愛する、ちょっとだけ趣味の歪んだ御令嬢と、それを取り巻く個性豊かな面々の物語。
※本作品は他作品【猫屋敷古物商店の事件台帳】の精神的続編となります。本作から読んでいただいても問題ありませんが、前作からお読みいただくとなおお楽しみいただけるかと思います。

靴を落としたらシンデレラになれるらしい
犬野きらり
恋愛
ノーマン王立学園に通う貴族学生のクリスマスパーティー。
突然異様な雰囲気に包まれて、公開婚約破棄断罪騒動が勃発(男爵令嬢を囲むお約束のイケメンヒーロー)
私(ティアラ)は周りで見ている一般学生ですから関係ありません。しかし…
断罪後、靴擦れをおこして、運悪く履いていたハイヒールがスッポ抜けて、ある一人の頭に衝突して…
関係ないと思っていた高位貴族の婚約破棄騒動は、ティアラにもしっかり影響がありまして!?
「私には関係ありませんから!!!」
「私ではありません」
階段で靴を落とせば別物語が始まっていた。
否定したい侯爵令嬢ティアラと落とされた靴を拾ったことにより、新たな性癖が目覚めてしまった公爵令息…
そしてなんとなく気になる年上警備員…
(注意)視点がコロコロ変わります。時系列も少し戻る時があります。
読みにくいのでご注意下さい。
コドク 〜ミドウとクロ〜
藤井ことなり
ミステリー
刑事課黒田班に配属されて数ヶ月経ったある日、マキこと牧里子巡査は[ミドウ案件]という言葉を知る。
それはTMS探偵事務所のミドウこと、西御堂あずらが関係する事件のことだった。
ミドウはマキの上司であるクロこと黒田誠悟とは元同僚で上司と部下の関係。
警察を辞め探偵になったミドウは事件を掘り起こして、あとは警察に任せるという厄介な人物となっていた。
事件で関わってしまったマキは、その後お目付け役としてミドウと行動を共にする[ミドウ番]となってしまい、黒田班として刑事でありながらミドウのパートナーとして事件に関わっていく。
若月骨董店若旦那の事件簿~水晶盤の宵~
七瀬京
ミステリー
秋。若月骨董店に、骨董鑑定の仕事が舞い込んできた。持ち込まれた品を見て、骨董屋の息子である春宵(しゅんゆう)は驚愕する。
依頼人はその依頼の品を『鬼の剥製』だという。
依頼人は高浜祥子。そして持ち主は、高浜祥子の遠縁に当たるという橿原京香(かしはらみやこ)という女だった。
橿原家は、水産業を営みそれなりの財産もあるという家だった。しかし、水産業で繁盛していると言うだけではなく、橿原京香が嫁いできてから、ろくな事がおきた事が無いという事でも、有名な家だった。
そして、春宵は、『鬼の剥製』を一目見たときから、ある事実に気が付いていた。この『鬼の剥製』が、本物の人間を使っているという事実だった………。
秋を舞台にした『鬼の剥製』と一人の女の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる