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査定4 なぜウグイスは鳴かなかったのか【問題編】
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鶴の一声と言うべきか、愛の一言ですんなりと話が決まってしまう辺り、力関係がはっきりとしている。やはり女子というのは彼女くらい強くなければ駄目なのだろうか。とてもではないが真似できそうにはない。
「それじゃ、邪魔したな。今度はちゃんと前もって誘うからよ」
一里之が言うと、相模がキリリとした表情を見せ、ダンディーな声質を作る。
「猫屋敷さん。今日はとてもいいものを見せてもらったよ。ありがとう」
その言葉に改めて胸元に手をやってしまう千早。減るもんじゃないんだから――と、確かこの服を選ぶ時に愛も言っていたのだが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。千早のリアクションを見た一里之が、小声で相模に言った。残念ながら、こっちまでしっかりと聞こえてしまったのだが。
「おい、あまり猫屋敷を怒らせないほうがいい――。後悔するぞ」
それは愛にも聞こえていたようで、慌てた様子で一里之の言葉を遮ろうとする。
「じゃ、じゃあ千早ちゃんまたね! 忙しいところに押しかけちゃってごめんね!」
一里之と相模を店の外に追いやるように押し出そうとする愛。その光景を見ながら「いえ、また誘ってください」と返す千早。
「猫屋敷さんを怒らせたらどう後悔するんだ?」
相模の声が店の中から夏の外へと漏れ出す。セミの鳴き声に混じって、一里之の声が辛うじて耳へと入ってきた。
「……一生スキップができなくなる」
その言葉に、思わず商品棚にある件の筆へと目をやる。あの時は後先考えずにやらかしてしまったが、まさか本当にスキップができなくなる呪いが一里之にかかってしまったのだろうか。いや、それならば班目も同じような呪いがかかっているはずだが、両者からそれらしい申し出はない。だから多分大丈夫だ。千早は自分にそう言い聞かせて小さく頷く。
引き戸が閉まると、夏の騒がしさが遮断され、いつも通りの静かな店内だけが残った。今日も外は晴天で暑いのであろうが、元より日の入らない設計になっており、またクーラーの効いた店内は、なんだか冷たく寂しいように思えた。少し前までは常にこのような雰囲気だったが、やはり一里之や愛がちょくちょく顔を見せるようになってから、なんだか店も明るくなったような気がする。あえて他人と積極的に関わって来なかった千早自身でさえ、なんだか少し変わったような実感があった。
一里之達を見送り、いつもの日常へと戻った猫屋敷古物商店。改めて仕事に戻ろうとした千早は、片手に持っていた小豆のアイスが、まさしく今とけ出そうとしていたのを慌ててくわえた。そのまま班目から手配してもらったパソコンの前に座る。
「それじゃ、邪魔したな。今度はちゃんと前もって誘うからよ」
一里之が言うと、相模がキリリとした表情を見せ、ダンディーな声質を作る。
「猫屋敷さん。今日はとてもいいものを見せてもらったよ。ありがとう」
その言葉に改めて胸元に手をやってしまう千早。減るもんじゃないんだから――と、確かこの服を選ぶ時に愛も言っていたのだが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。千早のリアクションを見た一里之が、小声で相模に言った。残念ながら、こっちまでしっかりと聞こえてしまったのだが。
「おい、あまり猫屋敷を怒らせないほうがいい――。後悔するぞ」
それは愛にも聞こえていたようで、慌てた様子で一里之の言葉を遮ろうとする。
「じゃ、じゃあ千早ちゃんまたね! 忙しいところに押しかけちゃってごめんね!」
一里之と相模を店の外に追いやるように押し出そうとする愛。その光景を見ながら「いえ、また誘ってください」と返す千早。
「猫屋敷さんを怒らせたらどう後悔するんだ?」
相模の声が店の中から夏の外へと漏れ出す。セミの鳴き声に混じって、一里之の声が辛うじて耳へと入ってきた。
「……一生スキップができなくなる」
その言葉に、思わず商品棚にある件の筆へと目をやる。あの時は後先考えずにやらかしてしまったが、まさか本当にスキップができなくなる呪いが一里之にかかってしまったのだろうか。いや、それならば班目も同じような呪いがかかっているはずだが、両者からそれらしい申し出はない。だから多分大丈夫だ。千早は自分にそう言い聞かせて小さく頷く。
引き戸が閉まると、夏の騒がしさが遮断され、いつも通りの静かな店内だけが残った。今日も外は晴天で暑いのであろうが、元より日の入らない設計になっており、またクーラーの効いた店内は、なんだか冷たく寂しいように思えた。少し前までは常にこのような雰囲気だったが、やはり一里之や愛がちょくちょく顔を見せるようになってから、なんだか店も明るくなったような気がする。あえて他人と積極的に関わって来なかった千早自身でさえ、なんだか少し変わったような実感があった。
一里之達を見送り、いつもの日常へと戻った猫屋敷古物商店。改めて仕事に戻ろうとした千早は、片手に持っていた小豆のアイスが、まさしく今とけ出そうとしていたのを慌ててくわえた。そのまま班目から手配してもらったパソコンの前に座る。
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