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査定4 なぜウグイスは鳴かなかったのか【問題編】

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 教えてもらった住所宛に申込書を送ると、それから1週間もしないうちに荷物が届いた。どんな代物が送りつけられてくるのか分からなかったため身構えていたが、いざ送られてきたのはA4サイズの茶封筒がひとつだけ。開けてみると、詳細が記入された買取申込書と、薄くて黒い角ばったものが出てきた。どうやらフロッピーディスクという記憶媒体のようだった。念のため依頼主に確認を取り、査定へと入る。フロッピーディスクが依頼主のいう事件とどう繋がるのかは不明だが、とりあえず中身を確認することから始めることにした。

 今の時代はディスクやUSBを記憶媒体として使用しているが、ひと昔前のパソコンでは、主にフロッピーディスクが記憶媒体として使われていたようだ。もちろん、今のパソコンでは使用できないため、まずはフロッピーディスクを使用できる環境を作らねばならなかった。

 ざっと調べた感じでは、今のパソコンでも外付けでフロッピーディスクを読み取る機械があるらしいのだが、パソコンに詳しくない千早は使いこなせる自信がない。そもそもパソコン自体を持っていないのだ。学校のパソコン室は夏季休暇中でも申請すれば使えるのだろうが、さすがにフロッピーディスクを使用できるほどパソコンが古いものであるとは思えない。

 悩んだ挙げ句、班目に相談してみた。以前は道の駅まで行って、そこに置いてある公衆電話から連絡をしていたのであるが、メールフォームという便利な機能ができたおかげで、メールだけで用事が済むようになった。メモしてあった班目のアドレスへとメールを送ると、しばらくした後にレスポンスがあった。

 ――動くかどうかは分からないが、家の物置にフロッピーディスクを読み取れるパソコンが眠っているかもしれない。

 その返事に、千早はすぐさまそのパソコンを手配して欲しいと班目にお願いした。普段から常連であり、お互い持ちつ持たれつの関係にある千早と班目。もちろん、班目が千早の頼みを断る理由はない。こうして、班目が随分と大きなパソコンを店に持ってきてくれたのが昨日のこと。季節は7月より8月へと移ろっていた。

 班目からカウンター脇に設置してもらった旧型のパソコンは、とにかく大きくて場所を取る。モニターなんてブラウン管だし、パソコン自体の立ち上がりにも、かなりの時間を要する。教えてもらった場所にフロッピーディスクを差し込んだが、中で擦れるような音が響くのみで、一向に読み込む気配がない。動作は保証できないとのことだったし、やはり故障しているのでは――と思うほどの時間をかけて、ようやくパソコンはフロッピーディスクを読み込んだ。
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