猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【エピローグ】

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 ラクレスメンバーを含む周囲の人間から得た情報らしいが、元よりカネモトという男は、動画での人気とは裏腹に、その本性は人として最低だったらしい。自分にとって都合の悪い人間は排除する。利用できる相手は利用する。しかも外面だけは良いからタチが悪い。

「邪魔だった井之川って人を排除して、それでいて企画やカメラマンを押し付けた挙げ句、自分は人気者気取りか。控え目に言っても最低の男だね」

 愛が腕を組みつつ、いきどおったかのごとく鼻息を荒げる。それを見て「まぁまぁ……」となだめるは一里之。なんだか立場が逆のような気がしなくもない。

「そういう人間だったからこそ、本性を知った人間から恨みを買うことも多かったみたいですね。カネモトに頼まれたからこそ【6人目のラクレス】に徹していた井之川も、カネモトの本性を知って気づいてしまった。自分は蹴落とされた側の人間であること、そして都合良く利用されているだけにすぎないことを――。彼はカネモトの都合で、一生治らない火傷の跡まで顔に残してしまった。有名動画クリエイターになる機会を諦めざるを得なくなった。カネモトを殺害する動機としては充分すぎますよねぇ」

 今回の事件は怨恨による殺人事件だった。話を聞いただけでも、井之川の恨みは相当なものだと分かる。その恨みは悪意となり、人喰いエレベーター内にて爆発してしまった。

「人喰いエレベーターの動画自体はカネモトのドッキリという企画でしたが、そもそも人喰いエレベーターの話を仕入れてきたのは井之川のほうだそうです。その時にはすでにカネモトの殺害計画も完成していたそうです。本番の数日前に単独でおばけマンションへと訪れ、即席の鏡を現場で作り上げてエレベーターの鏡に貼り付けておいたらしいです。この辺りも店主さんの推測通りでした。ただ、犯人である井之川が髪の毛の色を赤に染めていたのは、どうやらカネモトになりすますことが目的ではなかったようです」

 大海が目撃した赤髪の男。それこそが井之川であったことは裏が取れている。ただ、髪の毛の色が赤だったのには、千早の推測とは異なる理由があった。

「あの辺りは想像でしかありませんが、カネモトさんになりすますことが目的ではなかったとしたら、なぜ犯人は髪を赤に染めていたのですか?」

 この辺りの事情は、千早が知ることのできた情報だけでは推測のしようがない。もっとも、犯人から直接事情を聞いてしまえば一発なのであるが。
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