猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【エピローグ】

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「さて、こうしてみなさんに集まってもらったのは他でもありません。例の事件――ざっとですが真相が判明しましたので、ご報告をと思いましてね」

 千早には査定手数料を支払わねばならないし、事件のその後のことは、きっと一里之達も気になっていたことだろう。だからこそ、千早を通じて店に集まってもらったわけだ。班目は査定手数料の支払いができるうえに、事件の報告もできて一石二鳥である。

「あの事件、結構ネットでも騒がれたみたいだからねぇ。週刊誌なんかは、メンバー同士の確執があったみたいなことを書き立てていたみたいだし」

 愛の言葉に頷く班目。週刊誌の記者というものは、どこから情報を得てくるのであろうか。下手をすると、警察なんかより情報が早かったりするから恐ろしい。もちろん、お互いの立場というものがあり、それぞれの縄張りはギリギリで守られているのだが、あの情報収集能力はあなどれない。

「えぇ。やはり店主さんの推測通り、ラクレスは当初より6人で活動をしていたそうです。その6人目のメンバーの名前は井之川崇仁いのかわたかひと。ラクレスメンバーと同じ大学に通っており、ラクレスの中核メンバーでもあります。どうやら、企画などもほとんど彼が考えていたようで、動画内でも中心人物となっていたようです」

 千早の推測は中々に的を射ており、想像で補ったであろう部分も、見事に当たっていた。不謹慎であるが、答え合せが少し楽しかったくらいだ。

「しかし、カネモトはそれが面白くなかったようですねぇ。対抗して企画した動画も、彼の企画した動画には視聴数が敵わない。また、視聴者からの人気というのも、いかんせん敵わない。表立ってぶつかることはなかったそうですが、周囲には結構愚痴を漏らしていたようだ――とは、他のラクレスメンバーの証言です」

 人間というのは2人以上が集まるとルールというものが必要となる。そして、それは人数が増えれば増えるほど複雑化し、ルールだけでは絶対にフォローできなくなる。どんな集団でも、人数が集まれば集まるだけ、ルールを守らない者が出てくる。もしくは、そのルールが腑に落ちない者が出てくる。そして――対立というものが生まれる。

「しかし、そこまで優秀だった動画クリエイターが、どうしてカメラマンという立場になってしまったのでしょう?」

 井之川という6人目のラクレスは、企画力の高さはもちろんのこと、視聴者からのウケも良かった。しかし、ある動画での事故をきっかけに、裏方へと回らざるを得なくなったようだ。
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