猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【解答編】

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 大海から聞いた話を思い起こす。確か彼が目撃したのは、玄関から飛び出した赤髪の男――それから少しして、現場から飛び出してきた残りのラクレスメンバーだったはず。大海が目撃したのはカネモトの亡霊でもなんでもなく、カネモトと同じように髪の毛を赤に染めた犯人だったのだ。

「でも、なんでまた犯人は髪の毛を赤に染めてたんだろうな?」

 ことごとく班目の疑問を横取りする形になる一里之。もし歳が近ければ、彼とは良い友人関係になったのかもしれない。あまりにも思考パターンが似ているため、妙な親近感さえ覚えてしまう班目。髪の毛を金に染めた今時の高校生と思考パターンが似ているとは、まだまだ若いと喜ぶべきか、それとも考えが稚拙だとなげくべきなのか。前者ということにしておきたい。

「ここからは私の想像でしかありませんが、万が一、誰かに目撃されることを想定して、カネモトさんに成りすまそうとしたのではないでしょうか? もちろん、誰にも目撃されなければ、それはそれで問題ありませんが――。そして、理由はどうであれ、あらかじめカネモトさんに成りすまそうと髪の毛の色を赤に染めていたことこそが、最初から犯人の狙いがカネモトさんであったという根拠です。くわえて、犯人の狙いがカネモトさんだったということは、あらかじめカネモトさんがエレベーターに乗ることを知っていた人物が、計画的に犯行を行った裏付けになります。すなわち、全く無関係の第三者が犯人の可能性は完全に消えるわけです」

 犯人がカネモトに成りすまそうとした理由。それは様々な可能性が考えられるが、推測できる材料がない。想像の域を出ることはないということか。ただ、成りすまそうとしたこと自体、犯人がラクレス関係者であることを裏付けることになる。

「こうして現場から離れた犯人。もちろん、後になって事件が発覚し、自分が現場にいたことが明らかになるのは見通していたと思われます。ただ、カネモトさんを不可能犯罪に見せかけて殺害したことにより、自分への嫌疑を晴らす予定だったのでしょう。生配信の後半が始まった時点で姿を消していたのは事実ですし、早々に現場を離れていたことを主張すればいいだけですから。そして、ほとぼりが冷めてから、アクリル板を使ったダミーの鏡を回収する予定だった――」

 全ては犯人の思い通りというわけではなかったということか。まず、ラクレスが警察に通報せずに雲隠れしてしまったこと。そして、トリックの肝となった大道具を回収する前に、猫屋敷古物商店の15代目に暴かれてしまったこと。特に大道具が暴かれたことは、犯人にとって痛手だろう。

「これが今回の事件の全て。博士さん、ジュンヤさん、キー坊さん、マソンヌさんに犯行は不可能だった。なぜなら、犯人は画面には映らなかったカメラマン――【6人目のラクレス】だったのですから」
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