猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【解答編】

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 「撮影日当日、カメラマンとしてラクレスの撮影に同行し、準備時間の5分を利用して、エレベーターの中に身を潜めます。この辺りはエレベーターに乗り込む姿を目撃されなければいいだけですし、そこまで難しくはないと思います」

 この場で当時のことを見ているかのごとく、脳内で映像が再生される。

「エレベーターに乗り込んだら、あらかじめ用意してあったお手製の鏡を剥がし、その裏に隠れました。さしずめ――忍法、隠れみの術といったところでしょうか」

 千早はきっと、一里之達にも分かりやすいように表現を選んだつもりなのであろう。しかしながら、一里之からは予期しなかったであろう心ない一言がこぼれ落ちた。

「いや猫屋敷。高校生にもなって忍法って――」

 一瞬、時が止まる。けれども、千早が軽く咳払いをしたことで、再び時は動き出した。ただし――千早の頬は真っ赤に染まっている。ちょっと面白いことを言おうとして、だだ滑りしてしまったような感じになってしまった。頑張れ。ここは頑張れ。超頑張れ。班目の気持ちが通じたのか、千早はいまだに頬を紅潮させながらも顔をあげる。

「さ、さて――。こうして犯人がエレベーターの中に身を隠した後、ラクレスの5人が全員でエレベーターに乗ろうとしました。元々、最大積載量内ギリギリだったわけですから、ラクレスのメンバーに犯人の体重が加わり、ブザーが鳴ってしまったわけです」

 少し動揺しているか、声が裏返りそうになりながらも再開した千早。なんというか、なんだかんだで高校生なのだな――と、千早の姿を見て班目は思った。

「この時点で、カメラマンの役割をしていた人物が姿を消してしまっているわけです。しかし、生配信という性質上、準備時間を伸ばすわけにはいきません。結局、苦肉の策として人員の配置を変え、生配信がスタートしました。当然ですが、この時も犯人はずっとエレベーターの中に身を隠しています」

 今回の事件はエレベーターという密室の中で起きた事件である。さて、犯人はいかにしてエレベーターに乗り込み、いかにして現場を後にしたのか――というのが焦点になるが、とりあえず前者の問題は解決。すなわち、事件のはるか前より、犯人はエレベーターに乗り込んでいた。では、後者の問題。いかにして犯人は現場を後にしたのだろうか。

「1階の博士に見送られ、カネモトさんがエレベーターに乗り込みました。そのまま何事もなく最上階へと到着。事実上、マソンヌさんとの最期の別れを終えたカネモトさんは、再び1階に戻ろうとします。多分、彼らのシナリオでは、1階に到着するまでの間にカネモトさんがドッキリの準備をする予定だったのでしょう」
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