163 / 226
査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【解答編】
10
しおりを挟む
これには一里之と愛も度肝を抜かれたようだった。まぁ、人のことは言えない。班目もまた、その可能性をしっかりと見落としてしまっていた。捜査の方針としても、まずはラクレスの話を聞かないことには――という方向性が強く、お恥ずかしいことに警察内部でも見落とされていることであろう。それとも、班目がろくに捜査会議を聞いていなかっただけで、もしかすると、そんな話が出ていたのかもしれない。いや、警察の威信のためにも、そういうことにしておこう。
「私がカメラマンの存在に気づいた理由はいたって単純です。実はラクレス5人組が挨拶をする場面でおかしな点を見つけたのです」
それを聞いた一里之が、またしても一番乗りで動画を再生する。どうにも若者との間に見えない壁がある――なんてことを考えながら、班目は自分のスマートフォンで動画を再生した。両サイドから愛と千早が一里之のスマートフォンを覗き込む。孤独まぎれに言わせてもらおう。班目の隣、空いてますよ。
「注目して欲しいのは、ラクレスが挨拶をした後、人喰いエレベーターを呼ぶ場面です」
動画内では挨拶が終わった後、人喰いエレベーターの内装が特殊であるとのことで、博士がエレベーターの呼び出しボタンを押す。すると、カメラは階数表示へとアップで寄り、ランプが徐々に1階へと降りてくる様を映し出す。そこまで見て、班目は自身でも意識せずに「あっ!」と声を上げ、そして続けた。
「挨拶の撮影だけなら固定したカメラでも可能でしょうが、途中から階数表示をアップにして映すのは――確かにカメラマンが必要ですね。そのままアップするわけでなく、しっかり寄ってからアップになってますし」
冒頭のラクレスの挨拶シーン。それに限り、カネモトでも博士でもない、またジュンヤでもキー坊でもマソンヌでもない誰かがカメラを回しているのだ。班目の言葉に満足げに頷くと千早は続ける。
「班目様のおっしゃる通りです。あの現場にいたのは5人ではなく、カメラマンを含む6人だった。そう考えると、アンバランスだった人員配置にも納得できます」
千早が言うと、まだ事実を飲み込めずにいるのだろう。一里之がやや声を上ずらせる。
「アンバランスだった人員配置?」
疑問に疑問を重ねるようなことをしても、なおさらに混乱するだけなのだから、もう少し落ち着いてから問いかければいいものを――なんて思っている班目もまた、もしかすると落ち着いてはいなかったのかもしれない。
「私がカメラマンの存在に気づいた理由はいたって単純です。実はラクレス5人組が挨拶をする場面でおかしな点を見つけたのです」
それを聞いた一里之が、またしても一番乗りで動画を再生する。どうにも若者との間に見えない壁がある――なんてことを考えながら、班目は自分のスマートフォンで動画を再生した。両サイドから愛と千早が一里之のスマートフォンを覗き込む。孤独まぎれに言わせてもらおう。班目の隣、空いてますよ。
「注目して欲しいのは、ラクレスが挨拶をした後、人喰いエレベーターを呼ぶ場面です」
動画内では挨拶が終わった後、人喰いエレベーターの内装が特殊であるとのことで、博士がエレベーターの呼び出しボタンを押す。すると、カメラは階数表示へとアップで寄り、ランプが徐々に1階へと降りてくる様を映し出す。そこまで見て、班目は自身でも意識せずに「あっ!」と声を上げ、そして続けた。
「挨拶の撮影だけなら固定したカメラでも可能でしょうが、途中から階数表示をアップにして映すのは――確かにカメラマンが必要ですね。そのままアップするわけでなく、しっかり寄ってからアップになってますし」
冒頭のラクレスの挨拶シーン。それに限り、カネモトでも博士でもない、またジュンヤでもキー坊でもマソンヌでもない誰かがカメラを回しているのだ。班目の言葉に満足げに頷くと千早は続ける。
「班目様のおっしゃる通りです。あの現場にいたのは5人ではなく、カメラマンを含む6人だった。そう考えると、アンバランスだった人員配置にも納得できます」
千早が言うと、まだ事実を飲み込めずにいるのだろう。一里之がやや声を上ずらせる。
「アンバランスだった人員配置?」
疑問に疑問を重ねるようなことをしても、なおさらに混乱するだけなのだから、もう少し落ち着いてから問いかければいいものを――なんて思っている班目もまた、もしかすると落ち着いてはいなかったのかもしれない。
0
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。

【完結】共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?
ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―
鬼霧宗作
ミステリー
窓辺野コトリは、窓辺野不動産の社長令嬢である。誰もが羨む悠々自適な生活を送っていた彼女には、ちょっとだけ――ほんのちょっとだけ、人がドン引きしてしまうような趣味があった。
事故物件に異常なほどの執着――いや、愛着をみせること。むしろ、性的興奮さえ抱いているのかもしれない。
不動産会社の令嬢という立場を利用して、事故物件を転々とする彼女は、いつしか【ロンダリングプリンセス】と呼ばれるようになり――。
これは、事故物件を心から愛する、ちょっとだけ趣味の歪んだ御令嬢と、それを取り巻く個性豊かな面々の物語。
※本作品は他作品【猫屋敷古物商店の事件台帳】の精神的続編となります。本作から読んでいただいても問題ありませんが、前作からお読みいただくとなおお楽しみいただけるかと思います。

消えた弟
ぷりん
ミステリー
田舎で育った年の離れた兄弟2人。父親と母親と4人で仲良く暮らしていたが、ある日弟が行方不明に。しかし父親は何故か警察を嫌い頼ろうとしない。
大事な弟を探そうと、1人で孤軍奮闘していた兄はある不可思議な点に気付き始める。
果たして消えた弟はどこへ行ったのか。
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる