猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【解答編】

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 ラクレス全員の総体重は394キロ。そして、エレベーターの最大積載量は400キロ。それなのにも関わらず、5人でエレベーターに乗ったらブザーが鳴ったらしい。ラクレスの総体重は最大積載量内に収まっているというのに。

「ラクレスの総体重はエレベーターの最大積載量内で収まっています。それなのに、5人でエレベーターに乗ってみたらブザーが鳴った。それはなぜなのでしょうか? 色々と可能性を探ってみたのですが、犯人が明らかになった今、はっきりと断言することができます。つまり――」

 千早はそこで言葉を区切る。班目は千早の言葉から、動画内で話されていた人喰いエレベーターにまつわる怪談――明らかに作り話であろうエピソードを思い出した。確か、失踪した女性の遺体がエレベーターの天井から見つかったという話だったはず。すなわち、千早が言いたいことは、そういうことなのかもしれない。

「犯人はエレベーターの中にずっと潜んでいたのです。それも、犯行が行われるずっと前から」

 やはり思った通り。ブザーが鳴る原因として考えられるのは、まず重量オーバーであろう。しかしながら、エレベーターメンテナンス会社の作業員の話だと――。

「あのさ、さっき千早ちゃんも確認してたけど、人喰いエレベーターって天井の上に出たりすることができないんでしょう? 仮に犯人がずっとエレベーターの中に潜んでいたとして、どこに潜むの?」

 今度は愛が班目の代弁をしてくれた。全面鏡張りという特殊なデザインの人喰いエレベーター。しかも、マンション用のエレベーターはそもそも天井に出られる仕様になっていない――とは、作業員の言葉だ。愛の疑問を受けて、千早は人差し指に続いて中指も立てた。

「ここで大事になってくるのが、ふたつめのポイント。鏡に映らなかった観葉植物です」

 郵便ボックス脇に置いてあった観葉植物。動画内でも、最初に呼んだ時は、しっかりと観葉植物の緑が映り込んでいたというのに、いざカネモトが最上階に向かうべくエレベーターに乗り込む際には、なぜだかエレベーター内の鏡に観葉植物が映り込んでいない。カメラの位置、撮影する角度は全く変わっていないのに、後者のほうだけ観葉植物が中の鏡に映り込んでいない。

「この観葉植物。最初は間違いなくエレベーター内の鏡に映り込んでいるのに、後半になると映り込まなくなります。もしかして、ラクレスの誰かが動かしたのかもと考えたのですが、観葉植物が動画を撮影するにあたって邪魔になるとは考えられません。それに、邪魔だと思ったなら最初から撤去していたはず。では、誰も観葉植物を移動させていないとして、どうしてエレベーター内の鏡に映り込まなくなったのでしょうか。それはおそらく、観葉植物ではなく他のものが移動したからなんです」
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