153 / 226
査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】
47
しおりを挟む
「もしかしてバチがあたったのかもしれません。曲がりなりにも、いわくのある場所で悪ふざけをしようとしたから、こんなことになってしまったのかもしれません。でも、これだけは断言できます。ジュンヤ、キー坊、マソンヌ、そして博士こと私は、誓ってカネモトを殺すなんて真似はしていません」
もう一度自分達がカネモト殺害に関与していないことをアピールする博士。現場には彼らしかおらず、カネモトを殺害できたのも彼らしかいない。しかし、思い詰めた様子の4人の姿が嘘には見えなかった。
「――とにかく、これから警察に行ってきます。今さらかもしれないし、本当なら事件が起きてすぐに警察に行くべきでした。そこは恥ずべきところだと思うし、皆さまからお叱りをいただいても仕方がないと思います。改めて、もう一度ここに謝罪いたします。本当に申しわけありませんでした」
博士が先導する形で頭を下げ、それにならって一同が頭を下げる。
「本当に申しわけありませんでした」
一同が頭を下げ続けること数十秒。ゆっくりと頭を上げた博士が、カメラのほうへと訴えかける。
「この後のご報告も動画にて投稿させていただくことになると思います。それまで、いましばらくお待ちくださいますようお願いします。それでは――」
もう一度博士が頭を下げたところで動画は終わっていた。どうやら、彼らも腹を決めて警察に行くことにしたらしい。
――またしても閃光が頭を駆け巡る。ラクレスメンバーのアリバイ。合わせ鏡の中に映り込まなかった観葉植物。エレベーターの最大積載量。ラクレスが初めて投稿したという動画。あらゆる場面がフラッシュバックのように蘇り、そしてひとつの答えが千早の脳裏には焼き付けられた。
「とにかく、ラクレスのメンバーが警察に協力するとなれば、また新たな情報も手に入ることでしょう。まぁ、出向くとなると都内の警察のほうでしょうし、今日のうちに情報が入ってくることはないですねぇ。また情報が入り次第――」
「その情報は不要のようです。つい今さっき、査定のほうが終わりましたから。時代に合わせて成長したネット産業。そのネット産業の中から生まれた有名人による悪ふざけ。それによって引き起こされた悲劇。このいわく、かなり興味深いものがあります」
班目の言葉を遮ってやると、いつものケースからモノクルを取り出して片目にはめる。モノクル越しに見えるエレベーターホールに、千早は確信した。一里之と愛が顔を見合わせて頷き合う。そして班目は不敵な笑みを浮かべた。
「それでは猫屋敷古物商店の店主様。私の持ち込んだビデオカメラには如何ほどのお値段がついたのでしょうか? 査定結果を詳細に伺わせていただいてもよろしいですか?」
おばけマンションで起きた奇妙な事件。果たして犯人はどのような方法で、生配信中のカネモトを殺害したのか。そして、その犯人は一体誰なのか。
「それでは、これより査定の結果をお伝えさせていただきます」
――またひとつ、いわくの正体が明らかにされようとしていた。
もう一度自分達がカネモト殺害に関与していないことをアピールする博士。現場には彼らしかおらず、カネモトを殺害できたのも彼らしかいない。しかし、思い詰めた様子の4人の姿が嘘には見えなかった。
「――とにかく、これから警察に行ってきます。今さらかもしれないし、本当なら事件が起きてすぐに警察に行くべきでした。そこは恥ずべきところだと思うし、皆さまからお叱りをいただいても仕方がないと思います。改めて、もう一度ここに謝罪いたします。本当に申しわけありませんでした」
博士が先導する形で頭を下げ、それにならって一同が頭を下げる。
「本当に申しわけありませんでした」
一同が頭を下げ続けること数十秒。ゆっくりと頭を上げた博士が、カメラのほうへと訴えかける。
「この後のご報告も動画にて投稿させていただくことになると思います。それまで、いましばらくお待ちくださいますようお願いします。それでは――」
もう一度博士が頭を下げたところで動画は終わっていた。どうやら、彼らも腹を決めて警察に行くことにしたらしい。
――またしても閃光が頭を駆け巡る。ラクレスメンバーのアリバイ。合わせ鏡の中に映り込まなかった観葉植物。エレベーターの最大積載量。ラクレスが初めて投稿したという動画。あらゆる場面がフラッシュバックのように蘇り、そしてひとつの答えが千早の脳裏には焼き付けられた。
「とにかく、ラクレスのメンバーが警察に協力するとなれば、また新たな情報も手に入ることでしょう。まぁ、出向くとなると都内の警察のほうでしょうし、今日のうちに情報が入ってくることはないですねぇ。また情報が入り次第――」
「その情報は不要のようです。つい今さっき、査定のほうが終わりましたから。時代に合わせて成長したネット産業。そのネット産業の中から生まれた有名人による悪ふざけ。それによって引き起こされた悲劇。このいわく、かなり興味深いものがあります」
班目の言葉を遮ってやると、いつものケースからモノクルを取り出して片目にはめる。モノクル越しに見えるエレベーターホールに、千早は確信した。一里之と愛が顔を見合わせて頷き合う。そして班目は不敵な笑みを浮かべた。
「それでは猫屋敷古物商店の店主様。私の持ち込んだビデオカメラには如何ほどのお値段がついたのでしょうか? 査定結果を詳細に伺わせていただいてもよろしいですか?」
おばけマンションで起きた奇妙な事件。果たして犯人はどのような方法で、生配信中のカネモトを殺害したのか。そして、その犯人は一体誰なのか。
「それでは、これより査定の結果をお伝えさせていただきます」
――またひとつ、いわくの正体が明らかにされようとしていた。
0
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説
【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~
紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。
行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。
※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
この欠け落ちた匣庭の中で 終章―Dream of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
ーーこれが、匣の中だったんだ。
二〇一八年の夏。廃墟となった満生台を訪れたのは二人の若者。
彼らもまた、かつてGHOSTの研究によって運命を弄ばれた者たちだった。
信号領域の研究が展開され、そして壊れたニュータウン。終焉を迎えた現実と、終焉を拒絶する仮想。
歪なる領域に足を踏み入れる二人は、果たして何か一つでも、その世界に救いを与えることが出来るだろうか。
幻想、幻影、エンケージ。
魂魄、領域、人類の進化。
802部隊、九命会、レッドアイ・オペレーション……。
さあ、あの光の先へと進んでいこう。たとえもう二度と時計の針が巻き戻らないとしても。
私たちの駆け抜けたあの日々は確かに満ち足りていたと、懐かしめるようになるはずだから。
ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―
鬼霧宗作
ミステリー
窓辺野コトリは、窓辺野不動産の社長令嬢である。誰もが羨む悠々自適な生活を送っていた彼女には、ちょっとだけ――ほんのちょっとだけ、人がドン引きしてしまうような趣味があった。
事故物件に異常なほどの執着――いや、愛着をみせること。むしろ、性的興奮さえ抱いているのかもしれない。
不動産会社の令嬢という立場を利用して、事故物件を転々とする彼女は、いつしか【ロンダリングプリンセス】と呼ばれるようになり――。
これは、事故物件を心から愛する、ちょっとだけ趣味の歪んだ御令嬢と、それを取り巻く個性豊かな面々の物語。
※本作品は他作品【猫屋敷古物商店の事件台帳】の精神的続編となります。本作から読んでいただいても問題ありませんが、前作からお読みいただくとなおお楽しみいただけるかと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる