猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】

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「もしかしてバチがあたったのかもしれません。曲がりなりにも、いわくのある場所で悪ふざけをしようとしたから、こんなことになってしまったのかもしれません。でも、これだけは断言できます。ジュンヤ、キー坊、マソンヌ、そして博士こと私は、誓ってカネモトを殺すなんて真似はしていません」

 もう一度自分達がカネモト殺害に関与していないことをアピールする博士。現場には彼らしかおらず、カネモトを殺害できたのも彼らしかいない。しかし、思い詰めた様子の4人の姿が嘘には見えなかった。

「――とにかく、これから警察に行ってきます。今さらかもしれないし、本当なら事件が起きてすぐに警察に行くべきでした。そこは恥ずべきところだと思うし、皆さまからお叱りをいただいても仕方がないと思います。改めて、もう一度ここに謝罪いたします。本当に申しわけありませんでした」

 博士が先導する形で頭を下げ、それにならって一同が頭を下げる。

「本当に申しわけありませんでした」

 一同が頭を下げ続けること数十秒。ゆっくりと頭を上げた博士が、カメラのほうへと訴えかける。

「この後のご報告も動画にて投稿させていただくことになると思います。それまで、いましばらくお待ちくださいますようお願いします。それでは――」

 もう一度博士が頭を下げたところで動画は終わっていた。どうやら、彼らも腹を決めて警察に行くことにしたらしい。

 ――またしても閃光が頭を駆け巡る。ラクレスメンバーのアリバイ。合わせ鏡の中に映り込まなかった観葉植物。エレベーターの最大積載量。ラクレスが初めて投稿したという動画。あらゆる場面がフラッシュバックのように蘇り、そしてひとつの答えが千早の脳裏には焼き付けられた。

「とにかく、ラクレスのメンバーが警察に協力するとなれば、また新たな情報も手に入ることでしょう。まぁ、出向くとなると都内の警察のほうでしょうし、今日のうちに情報が入ってくることはないですねぇ。また情報が入り次第――」

「その情報は不要のようです。つい今さっき、査定のほうが終わりましたから。時代に合わせて成長したネット産業。そのネット産業の中から生まれた有名人による悪ふざけ。それによって引き起こされた悲劇。このいわく、かなり興味深いものがあります」

 班目の言葉を遮ってやると、いつものケースからモノクルを取り出して片目にはめる。モノクル越しに見えるエレベーターホールに、千早は確信した。一里之と愛が顔を見合わせて頷き合う。そして班目は不敵な笑みを浮かべた。

「それでは猫屋敷古物商店の店主様。私の持ち込んだビデオカメラには如何ほどのお値段がついたのでしょうか? 査定結果を詳細に伺わせていただいてもよろしいですか?」

 おばけマンションで起きた奇妙な事件。果たして犯人はどのような方法で、生配信中のカネモトを殺害したのか。そして、その犯人は一体誰なのか。

「それでは、これより査定の結果をお伝えさせていただきます」

 ――またひとつ、いわくの正体が明らかにされようとしていた。
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