猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】

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 当然であるが、あらかじめ段取りは決められているのであろう。キー坊が喋り終えたところで、全員が呼吸を合わせ、4人がいっぺんに口を開く。

「私達は断じてカネモトを殺してなんていません!」

 おばけマンションで起きた殺人事件の容疑者は、当然ながら現場にいたラクレスのメンバーに限られる。それなのに、4人が揃ってカネモトの殺害を否認した。もしかすると、メンバーの誰かをかばっているのか。

「生配信を見てもらった人達には分かると思いますが、僕達にカネモトを殺害することは不可能です。それに、唯一カネモトを殺害できたマソンヌですが、こいつは人を殺すようなやつじゃないし、もし何かあれば7階にいた僕が気づいていたはずです」

 ラクレス内ではボケ担当といった具合のキー坊であるが、その言葉は――その訴えは実に切実であり、動画内でのふざけたキャラクターとのギャップもあって、妙な説得力があった。確かに、マソンヌがカネモトに何かしようとしたのであれば、7階にいたキー坊が気づいていたはず。キー坊がマソンヌをかばっている可能性もゼロではないが、その真剣そうな表情が嘘だとは思いたくない。

「大体、なんでこんなことに……」

 絞り出すように言葉を漏らしたと思ったら、目頭をおさえるマソンヌ。カネモトを殺害するチャンスが唯一あったマソンヌではあるが、その涙が演技や嘘のようには見えない。しかし――カネモトが殺害されたということだけはまぎれもない事実なのだ。そればかりは曲げることもできない。

「今回の企画は、だったはずなのに」

 続けざまにマソンヌが放った言葉。それに引っかかりを覚えない人はいないことだろう。それを画面越しに察知するかのごとく、博士がフォローに入った。

「今、マソンヌが言った通り、今回の企画はカネモト発案のドッキリでした。おばけマンションという場所をお借りし、実際にエレベーターに乗ったカネモトが素っ裸でエレベーターから降りてくる――という、実にくだらない企画の予定だったんです。だからこそ、あんなことになってしまって、我々も混乱してしまったんです」

 今さらながら明かされた事実。おばけマンションで行われた撮影は、あらかじめ筋道が決められていた悪ふざけだったということか。例の生配信を見ていた視聴者のからすれば、完全なる肩透かしになってしまったのであろうが、千早にとってのそれは、まるで違う意味を持っていた。なるほど、そういうことならば、やはり犯人はごく限られた人間の中にいることになるし、いくつかの疑問も解消する。
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