猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】

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「えっと、ラクレスの新しい動画――これか」

 ラクレスのチャンネルにアクセスしたのであろう。早速、新しく投稿された動画を見つけると、スマートフォンを操作する一里之。千早も自分のスマートフォンを取り出すが、もはや一里之のスマートフォンを覗き込んだほうが早いと判断。愛と一緒に一里之のスマートフォンを覗き込んだ。さすがに班目が入り込むスペースはなく、仕方なしといった具合に、班目は自分のスマートフォンを操作する。

 動画のサムネイルには、カネモトが欠けてしまったラクレス4人が、神妙な面持ちをカメラに向けているものが使われていた。動画のタイトルは【謝罪と弁明】となっている。カネモトの事件に対して、これまで雲隠れしていたことを詫びる内容なのだろうか。一里之が動画の再生ボタンをタップした。

 動画は、どこかの部屋の中で、4人がソファーに腰をかけている場面から始まった。それぞれが神妙な面持ちを浮かべており、おばけマンションで騒いだ連中と同一人物とは思えないほど大人しい様子だった。

「えっと、この度――我々ラクレスが起こした問題について、まずは皆さまに謝罪をさせていただきます。この度は世間様をお騒がせし、本当に申しわけありませんでした」

 前置きなどほとんどなしに、博士の言葉で初っ端から謝罪という形で動画は始まった。

「本当に申しわけありませんでした」

 博士に続いて、銀髪のジュンヤ、青髪のキー坊、緑髪のマソンヌが頭を下げる。

「正直を言ってしまうと、我々も大変混乱しております。まさかカネモトがあんなことになってしまうとは思いも寄らず、想定外の出来事に怖くなり逃げ出してしまいました。そして、この動画を撮影している現在も、怖くて警察に行けずにいます」

 班目も自分のスマートフォンで動画の再生を始めたようで、博士の弁明する言葉が、まるで輪唱をするかのようにエレベーターホールへと響く。

「皆さまのお怒りは百も承知です。僕達のSNSはもちろん、所属事務所、投稿動画などに、沢山のお叱りの言葉が届いていることも把握しています」

 カメラに向かって口を開くジュンヤからは、全くわざとらしさが感じられない。メンバーの中でもっとも演技じみていた人物なだけに、吐露とろしている言葉は本物だと受け取ってもいいだろう。

「今さらながら、4人で話し合って、警察のほうに足を運ぶことにしました。それが、カネモトへのせめての手向けになると思います。でも、その前に視聴者の皆さまにはっきりと断言したいことがあります。そのために、動画を投稿することにしました」
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