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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】
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「あー、それは実際に見てもらったほうが早いかもしれないですねぇ」
作業員はそう言うとエレベーターの呼び出しボタンを押す。しばらくすると、ゆっくりとエレベーターの扉がスライドした。カネモトを何度も咀嚼した扉が。
「実はエレベーター内から天井に出られるような仕様になっているのは、非常用のエレベーターがほとんどです。このようなマンション用のエレベーターは、まずエレベーター内から天井に出られる仕様になっていないんです」
エレベーターの扉が閉じないように手で押さえると、もう片方の手で天井を指差す作業員。千早は遠慮なくエレベーターの中に足を踏み入れ、天井を確認させてもらう。確かに、天井には蛍光灯の明かりがあるだけで、天井の上に出られそうな出入り口は見当たらない。
犯人はエレベーターの天井裏に身を潜めており、カネモトを殺害した後は再び天井裏へと身を隠した――これは、エレベーターが動いていることが前提であるから、まず物理的に不可能だと思っていた。それに、仮にそれが可能だとしても、天井裏に身を隠すということは、その時点で犯人は自分の持ち場から姿を消していることになる。しかしながら、当時現場にいたメンバーの中に、そんな余裕があった人物などいなかったはずだ。最初から分かりきっていたことではあるが、天井裏を利用して――という推理は完全に消えたらしい。大体、エレベーター内から天井裏に出られない構造になっているのだから、利用のしようがないだろう。
「あのすいません。ちょっとそのままでいてもらっていいですか?」
天井裏に出るのは不可能だと知った千早は、頭の中を切り替える。作業員にエレベーターの扉を支えてもらっているついでに、エレベーターからやや離れ、改めてエレベーターの中を眺めた。それは、博士がカメラを構えていたであろう立ち位置からの観察だった。
「――やっぱり、郵便ボックス脇の観葉植物が鏡に映り込んでる。だったら、どうしてあの時、観葉植物は映り込まなかったのか」
ラクレスの動画では、観葉植物が忽然として消えたという現象が起きている。動画の序盤でエレベーター内が映し出された時は、確かに観葉植物はエレベーター内の鏡に映り込んでいた。しかし、カネモトを見送るシーンでは、なぜかエレベーター内の鏡に観葉植物が映り込んでいない。何度か見比べてはみたが、カメラの立ち位置にはほとんど違いがなかった。ゆえに、本来あった場所から観葉植物が消えたとしか思えない。これがどうにも引っかかる。
作業員はそう言うとエレベーターの呼び出しボタンを押す。しばらくすると、ゆっくりとエレベーターの扉がスライドした。カネモトを何度も咀嚼した扉が。
「実はエレベーター内から天井に出られるような仕様になっているのは、非常用のエレベーターがほとんどです。このようなマンション用のエレベーターは、まずエレベーター内から天井に出られる仕様になっていないんです」
エレベーターの扉が閉じないように手で押さえると、もう片方の手で天井を指差す作業員。千早は遠慮なくエレベーターの中に足を踏み入れ、天井を確認させてもらう。確かに、天井には蛍光灯の明かりがあるだけで、天井の上に出られそうな出入り口は見当たらない。
犯人はエレベーターの天井裏に身を潜めており、カネモトを殺害した後は再び天井裏へと身を隠した――これは、エレベーターが動いていることが前提であるから、まず物理的に不可能だと思っていた。それに、仮にそれが可能だとしても、天井裏に身を隠すということは、その時点で犯人は自分の持ち場から姿を消していることになる。しかしながら、当時現場にいたメンバーの中に、そんな余裕があった人物などいなかったはずだ。最初から分かりきっていたことではあるが、天井裏を利用して――という推理は完全に消えたらしい。大体、エレベーター内から天井裏に出られない構造になっているのだから、利用のしようがないだろう。
「あのすいません。ちょっとそのままでいてもらっていいですか?」
天井裏に出るのは不可能だと知った千早は、頭の中を切り替える。作業員にエレベーターの扉を支えてもらっているついでに、エレベーターからやや離れ、改めてエレベーターの中を眺めた。それは、博士がカメラを構えていたであろう立ち位置からの観察だった。
「――やっぱり、郵便ボックス脇の観葉植物が鏡に映り込んでる。だったら、どうしてあの時、観葉植物は映り込まなかったのか」
ラクレスの動画では、観葉植物が忽然として消えたという現象が起きている。動画の序盤でエレベーター内が映し出された時は、確かに観葉植物はエレベーター内の鏡に映り込んでいた。しかし、カネモトを見送るシーンでは、なぜかエレベーター内の鏡に観葉植物が映り込んでいない。何度か見比べてはみたが、カメラの立ち位置にはほとんど違いがなかった。ゆえに、本来あった場所から観葉植物が消えたとしか思えない。これがどうにも引っかかる。
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