猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】

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 そのまま大海は千早のほうへとやって来ると、スマートフォンを取り出した。

「猫屋敷さん。もしかすると、後になってから思い出すことがあるかもしれない。だから、良かったら連絡先を交換しないかい?」

 突然の申し込みに、千早は迷うことなくスマートフォンを取り出した。ただでさえ情報の少ない事件なのだ。新たな情報が手に入るの可能性があるのならば、こちらから連絡先の交換をお願いしたいくらいだ。

「ね、猫屋敷。それ、そいつが単に連絡先を交換したいだけだから。素直に受け取るな、素直に――」

 一里之にそう言われるも、千早は大海と連絡先を交換。単純に連絡先を教えてくれと言われたら断るが、少しでも査定に役立つ情報が手に入るかもしれないのであれば、連絡先くらいなら教えて損はない。

「純平。僕は純粋に猫屋敷さんに協力したいんだ。その言い方だと、まるで僕が軟派野郎みたいじゃないか」

「いや、普通に軟派野郎だから。誰がお前を見て硬派だって言うんだよ。おっかねぇ」

 そんなやり取りがあったものの、最終的に「それじゃまたな」で締めくくる一里之と大海。それに続く形で、改めてそれぞれが大海に挨拶をして部屋を後にした。乗りかかった船と言わんばかりに大海もついてくるのかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。千早の心の中を読んだかのごとく「どうせあいつは、これから女との用事が入ってるんだろうよ」と、やや妬ましげに一里之が漏らした。

 ここへ来た時と同様、階段を使って1階まで降りる。しばらくエレベーターホールで待っていると、外に軽のバンが停まり、中から工具箱を持ったツナギ姿の男が降りてきた。帽子をかぶってはいるが、はみ出ている髪の色は――やや赤みがかかっているように見えた。

「どうもー。共同ビルメンテナンスでーす」

 駆け足で正面玄関からエレベーターホールへと入ると、挨拶がてら帽子を脱いで頭を下げるツナギ姿の男。その髪色は、決して明るい色ではないが、やはり赤みのかかった色だった。

「どうやら、管理会社の人間ではなく、エレベーターのメンテナンスサービスを直接寄越したみたいですねぇ。なんというか、適当な管理会社で――」

 班目が小声で呟き落とす。てっきり管理会社の人間がやってくるのだと思っていたが、どうやらそうではないらしい。ただ、こちらのほうが千早にとっては好都合だった。エレベーターのメンテナンスサービスが来てくれたということは、エレベーターについて色々と聞くことができそうだから。

「あの、とりあえず現場に行けば分かるとの話しか頂いていないのですが、本日はどのようなご用件で――」
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