猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】

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「管理会社に問い合わせてみましょう。警察からの要請なら嫌とは言わないでしょうし、大義名分がありますから」

 班目はそう言うとスマートフォンを取り出す。しかし画面を見て苦笑い。

「あー、本当にここ電波の入りが悪いんですねぇ。このご時世に圏外表示は久々に見ましたよ」

 班目の言葉に「たまーに電波が入ったりするから、着信とかは時間差で分かりますけどね」と、なぜだか自慢げに頷く大海。実質、自宅でスマートフォンが使えない状態なのは不便で仕方がないだろうに。

「ちょっと失礼。外で電話をしてきます」

 班目はそう言うと部屋を出て行ってしまう。なんとなく手持ち無沙汰になってしまった千早達。とりあえず、千早はハンディービデオカメラの片付けを始め、一里之達はノートパソコンを弄り出す。そんな中、さりげなくみんなの茶碗を回収し、シンクに持って行って洗い出した大海。独り暮らしをしているだけあり、その辺りの生活力というのは、他の男子に比べて高そうだ。

「純平、何してるの?」

 一里之の背後からパソコンを覗き込む愛。一里之は慣れない様子の手つきでキーボードを叩く。

「いや、ラクレスの所属事務所のホームページはどうなってんのかなって思って」

 その言葉を聞いた千早は、ハンディービデオカメラを急いで片付けると、一里之と愛の後ろに回り込んだ。ソファー越しに一里之と愛のさらに背後からパソコンを覗き込む。

「あぁ、ラクレスって確か事務所に所属してたね。やることがやることだから、いつか問題を起こす――ってネットで叩かれてたけど、まさかここまで大きなことをやるとは事務所も思っていなかっただろうね。事務所は災難だよ」

 その辺りの予備知識は、きっと日常的に動画サイトを覗いている人間からすれば常識なのであろう。今や動画配信サービスがテレビを凌駕する勢いだから、人気のある配信者が事務所と契約していても不思議ではない。まぁ、一般的な芸能事務所とはまた毛色が違うのであろうが。

「事務所のホームページには……一応、ラクレスの件についての謝罪文が掲載されているみたいだな」

 一里之がパソコンを操作すると、殺風景な白の背景に黒文字か並ぶ。太字で【当社所属グループ、ラクレスの一連の報道について】と書かれた後に細かい文章が並んでいる。無意識のうちに愛と一里之のことをかき分けるようにしてパソコンを凝視する千早。

 謝罪文は、ラクレスが殺人事件に巻き込まれたことが説明された後、現場から立ち去り、現在も連絡がとれていないことを謝罪する内容だった。事務所のスタンスとしては、今回起きたことを真摯に受け止め、警察や関係者には全面的に協力する方針とのこと。正直なところ、本人達と連絡がとれない以上、事務所としてできるのはこれくらいだろう。
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