猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】

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 凶器は金属バット。頭を殴打するのであれば、それなりの凶器が必要になってくることは分かっていたが――。

「凶器の金属バットは、某スポーツ専門店で量産されているタイプの金属バットでした。よって、凶器から犯人を特定することは難しいでしょうねぇ。一応、ラクレスの生活圏内にある専門店には問い合わせましたが、カネモトを含めてラクレスのメンバーが金属バットを購入した履歴はありませんでした。ネット販売に関しても同様です」

 ここまで奇妙ないわくを作り出した犯人のことだ。うっかり足がつくような下手は打っていないはずである。しかしながら、予測はできていたものの、またしても新たな問題が出てきてしまった。それは、目の前に見えていながら、あえて見ようとしなかった当然の問題なのであるが。

「――犯人はどのタイミングで凶器を持ち込んだのでしょうか?」

 金属バットはそこまで小さいものではない。荷物の中に紛れ込ませるにしても、金属バットは長すぎる。ならば、凶器はどのタイミングでおばけマンションの中に持ち込まれたのだろうか。

「事件より前におばけマンションを訪れ、どこかに隠していたのではないか……というのが警察の見解です。さすがに、撮影の際に凶器を持ち込むのは無理がありますし、他のメンバーに怪しまれるでしょうから」

 凶器は事件よりも前に持ち込まれていた。それならば、凶器の持ち込みに関しては全く問題がないだろう。ただ、もうひとつ問題があった。すなわち、凶器が金属バットだということは、犯人はカネモトに近づいて犯行に及んだことになる。そして、カネモトに近づいて犯行に及んだとなると――少なからず返り血を浴びていたはずなのだ。その考えをそのまま口にする千早。

「それに、凶器が金属バットなら、犯行も至近距離で行われたことになる。よって、犯人は多少なりとも返り血を浴びたはずです。しかし、その後の動画の中で返り血を浴びた痕跡のある人物は誰1人としていない――」

 カネモトの遺体が発見された際、エレベーターの床には血飛沫が確認された。頭を殴打しての殺害だから、そこまで血は飛び散らなかっただろうが、カネモトの間近にいた犯人は、多少なりとも返り血を浴びているだろう。しかし、生配信ではないほうの動画を見る限りでは、誰にも返り血らしきものが確認できない。

「全く同じ服を用意しておいて着替えたとか?」

 愛の言葉に対して、千早より先に一里之が反応した。

「いや、さすがにそんな時間はないだろ」
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