猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】

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 そこから、しばらく画面が暗転。生配信ということもあり、もろもろの準備をしていたのであろう。再びカメラがエレベーターホールを映し出した際、カメラの前に映っているのはカネモトのみで、博士はカメラを担当していた。他のメンバーの姿が見えないのは、他の階で待機していたからだ。

 疑問点としては、ここがふたつめになるだろうか。それは、妙にアンバランスな配置である。おばけマンションは9階建ての建物。しかし、ラクレスは9階にマソンヌ、7階にキー坊、5階にジュンヤ、そして1階に博士という配置でスタンバイしていた。その配置がほぼ間違いないであろうことは、ふたつめの動画――生配信が終わった直後に撮影された映像を見れば明らかだ。千早はいつしか、ぽつりと疑問を漏らしていた。

「なぜ、こんなにもメンバーの配置がアンバランスになったのでしょうか――」

 それは自分に対する問いかけのようなものだったのだが、声として表に出てしまったせいで、班目が反応する。

「確かに。もし私だったら最上階の9階、その次が6階、そして3階と配置しますね。1階には博士が待機する形になりますし、まだこちらのほうがバランスはいいですよね」

 実際にカネモトと接触できたのは、最上階にいるマソンヌだけであり、ただエレベーターが通過するだけのエリアにバランスもへったくれもないのであるが、なんというか5階から1階まで誰も待機しないという配置に、少しばかり違和感があった。もっとも、これがラクレスの 采配さいはいであるというのであれば、話はそこで終わってしまうのだが。

 映像はまだまだ続く。エレベーターの扉が開いて、博士に見送られてカネモトがエレベーターへと乗り込む。その光景に、千早は「あっ――」っと声を漏らし、手袋をはめたままだった手をハンディービデオカメラに伸ばした。みんなに断りも入れずに、映像をある場面まで早戻しする。

「どうしたの? 急に――」

 愛に問われた千早は「なくなっているんです」とだけ呟く。そう、少し前の映像には映り込んでいたはずのものが――カネモトがエレベーターに乗り込む際の映像にも映っていなければならないはずのものが、なぜか映っていないのだ。千早が改めて再生したのは、冒頭でエレベーターを呼んだ場面だった。ぽっかりと口を開けたエレベーターの合わせ鏡には、郵便ボックスと観葉植物が映り込んでいる。

「この時は郵便ボックス脇に置いてある観葉植物が、エレベーターの鏡に映り込んでいるのですが……」

 千早はそう言いながら、今度は映像を早送り。カネモトがいよいよエレベーターに乗り込む場面で停止ボタンを押した。
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