猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】

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「だいたい午前0時から午前1時くらいだったと思うよ」

 大海の言葉を聞いて千早は班目のほうへと視線を移した。その意味を即座に察してくれたのか、手帳を取り出してページをめくる班目。

「ラクレスの生配信が始まったのが23時45分。放送が途切れたのが午前0時15分くらいですねぇ」

 班目の言葉を受けて、そのまま疑問を投げかける千早。

「――大海君。そうなると外に出る際に、どこかでラクレスと鉢合わせになった感じたですか?」

 放送が始まったのが23時45分。大海がおばけマンションの外にい出たのが午前0時から午前1時。つまり、大海が外に出る前にラクレスはすでに放送を始めており、ならば普通に考えて大海とラクレスは何かしらの形で鉢合わせしたはず。しかしながら、動画を見た限りでは、大海の姿はまるで映り込んでいなかった。これはどういうことなのか。

「いや、その日は人と会っててさ。そもそもマンションに帰って来たのが午前0時少し前だったんだ。で、部屋に戻りたかったんだけど、スマホに着信があって。それでおばけマンションの外にいたんだよ。まぁ、玄関から飛び出して来たラクレスらしきメンバーの姿は見たけど、直接鉢合わせとかはしていないかな」

 てっきり、その時間まで部屋にいた大海が、何かしらの用事で外に出たものだと思っていたが、どうやら違うらしい。その時間まで、そもそも外出していたという。となると、生配信のためにおばけマンションへと入っていくラクレスの姿は目撃していないのだろう。あくまでも目撃したのは、おばけマンションを後にするラクレスの姿のようだ。

「そもそも、どうして1時間も外にいたの? 電話なら、部屋に戻ってもできると思うんだけど」

 ちょうど同じことを聞こうと思っていたところだ。千早の代弁をするかのごとく、大海へと問う愛。純粋な疑問というだけなのであろうが、長身の愛が言うと、なんだか問い詰めているように見えるから不思議だ。

「あぁ、こいつの部屋さ、なんか良く分からないけど電波の入りが馬鹿みたいに悪いんだよ。前からワイファイ入れろって言ってるんだけど、こいつ変なところでケチってさ」

 今度は大海が答える番なのであるが、一里之が代弁する形になった。大海が外で電話をしていたのは、部屋の電波の入りが悪いからという理由らしい。

「あまり深く聞くつもりはありませんが、高校生の帰宅が午前0時過ぎというのは、あまり感心できませんねぇ」

 班目の一言に一里之が「刑事さん、こいつ不純異性交遊の常習犯なんだよ。どうせ、電話も女からの電話だろうし」といたずらっぽく付け足した。すると大海が「いや、誤解なんだ猫屋敷さん!」と、なぜか千早に対して弁解してくる。それが事実だろうとなんだろうと千早には関係ないのだが、とりあえず「は、はぁ……」と返事だけはしておく。
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