猫屋敷古物商店の事件台帳

査定３ おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】

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「今でこそ再生数を意識したチャンネル作りしてるけど、最初の頃は結構硬派だったんだぜ。ほら――この辺りはラクレスが動画投稿を始めた頃の動画だ」

　一里之はそう言うと、画面をスクロールさせる。そこには投稿日時が随分と古い動画が並んでいた。古いといっても数年前程度のものばかりであるが。

　――大学のアイスホッケー部を相手に、アイスホッケーやったことのない友達集めて、ガチで対決を申し込んでみた。ラクレス伝説の始まり。

　記念すべき最初の動画のタイトルを見て、千早は小さく溜め息を漏らす。一里之は硬派だといってはいるが、やっていることは最初から悪ふざけではないか。まぁ、確かに初期の頃のタイトルを眺めてみると、人様に迷惑をかけるような企画は少ないようだ。

　――カネモトチームVS博士チーム。ガチでバスケ対決してみた。負けたチームは超絶恥ずかしい罰ゲーム。キー坊のリバウンドが唸る。

　――人はどれだけ寝ずに過ごせるか。マソンヌとジュンヤがギネスに挑戦。

「これが硬派――ですか」

　班目も同じような感想を抱いたようで、パソコンを覗き込むのをやめてしまった。ちょうど会話が途切れたところで、大海がお茶を乗せたお盆を手にリビングへとやって来た。結局、飲み物は緑茶で統一したようだ。

「それで、僕に用事って何かな？」

　ソファー周りが満員なため、オープンキッチンのカウンターまで戻って口を開く大海。しかし、その視線はしっかりと千早へと向けられていた。

「先日、ここで発生した殺人事件なのですが、重要な証言をされたと聞きました。どんなことを目撃して、どんな証言をされたのかお聞きしたくて」

　千早が言うと、なぜか大海は少しがっかりしたような表情を見せる。大海が警察を相手にした証言の内容は、あえて班目からは聞いていない。情報が多いに越したことはないのだが、その時その時の証言が異なっているのも困るし、だから直接本人から聞いたほうがいいと考えていた。

「あぁ、そのことかい。一応、警察の人にはもう話したんだけどね」

　そう言って班目のほうへと視線をやる大海。班目は緑茶を一口飲むと「彼女の希望です。ぜひ、あなたの口から話してあげてください」と促す。すると大海は、ほんの少しだけ得意げに、それでいてやや声をひそめて話を始めた。

「実はさ、事件があった日の夜。俺、マンションの外にいたんだよね。まぁ、正面玄関が見える場所じゃなかったんだけど、誰かが正面玄関から出てくれば絶対に気づけるような場所にいたんだ」

　千早も緑茶をいただいて唇を濡らすと、大海の言葉に切り込む。

「それは何時くらいの話ですか？」

　ラクレスがおばけマンションにやってきて、事件が起きて撤収する。その間、ずっと大海が外にいたというのであれば、重要な目撃証言が得られるかもしれない。そう考えての問いかけだった。