猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】

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 階段は途中で踊り場を含む構造となっており、2階に上がると1階と同じような風景が飛び込んでくる。エレベーターホールに、きっと2階の各部屋へと向かうための廊下。階段はそのまま3階へと伸びているということは、おそらく最上階まで同じ構造が続くのであろう。

 階段をのぼり、踊り場で折れ曲り、また階段をのぼってを繰り返す。思った通り、どの階も同じような構造のようだ。この時点で、千早の頭はすでに、査定のためのサンプル収集を始めていた。

 階段からはエレベーターホールが見渡せる状態。それはつまり、エレベーターホールから階段の様子を伺えたことになるだろう。それぞれが待機していたのは、おそらくエレベーターの前であろうから、仮に階段を使用した人間がいれば、誰かが気づいたはず。最上階にはマソンヌ、7階にはキー坊、そして5階にはジュンヤが待機して、1階に博士がいた。つまり、5階のジュンヤが最上階に向かおうとしても、7階のキー坊と最上階のマソンヌに気づかれてしまう。7階のキー坊が最上階に向かっても、マソンヌに気づかれてしまうだろう。よって、唯一エレベーターが停まった最上階で、誰にも気づかれずに犯行に及べたのは――あらかじめ最上階で待機していたマソンヌしかいない。

「あー、これだけの階数を階段でのぼるのって久々かもしれない。足が痛くなってきた」

 愛がぽつりと漏らすと、上のほうから「普段から運動不足なんだよ。お前は」と、一里之の声が返ってくる。千早はそのやり取りさえ、サンプルとして収集。建物の構造上、そこまで防音というのはしっかりとしていないらしい。だから、少しくらい階数を離れていても声が届いてしまう。階段の周囲がコンクリートだから、妙に声が響くような気さえする。つまり、カネモトが殺害される際に騒いだりしたら、誰かしらがそれに気づいたはずだ。しかしながら、動画を見る限りでは、それらしき様子も見られなかった。これはどう考えても不自然である。

 結局、最上階まで構造は一切変わらず。強いて挙げるのであれば、上の階へと続く階段が壁に変わったくらいであり、全体的な構造に関しては、どの階も同じで大差はなかった。

 最上階のエレベーターホールで待ってくれていた一里之達と合流し、大海の部屋へと向かう。ここまでで分かったことは、やはりカネモトを殺害するチャンスがあったのは、唯一エレベーターが停まった最上階にいたマソンヌのみということ。ただ、その際にマソンヌがカネモトを殺害したのであれば、物音のひとつも立てたはずだ。少なくとも7階にいたキー坊には物音は届いただろう。けれども、博士とのやり取りを見る限り、どうやらキー坊は何も聞いていないようなのだ。
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