猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】

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 峠を引き返す形で越えると、班目が先導する形で川を渡って市内へと入る。市の中心部は盆地になっており、高低は様々であるが、峠であったり山に囲まれている。この地形こそが、豪雪地帯を作り出すのだとか。

 市の動脈部とも呼べる国道を途中で曲がり、しばらく行くとのぼりの坂道が増えてくる。面白半分、興味本位で大海の家には何度か行ったことがあるから、班目に先導されずとも目的地にはたどり着ける。ただ、班目が運転する車を追い越すなんて真似はできなかった。ただでさえ、学校で素行がよろしくないのに、これで交通違反で捕まったら、いよいよバイク通学の許可が取り消されてしまいそうだ。それは非常に困る。

 市街地から離れると、辺りが 拓ひらけて田んぼやら畑が延々と広がる光景に遭遇する。この辺りでは当たり前の光景なのであるが、背の高いビルに囲まれて暮らしている人には新鮮なのか、県外ナンバーの車が路肩に車を停め、写真撮影をしている光景をざらに見る。そんな景色に、ぽつんと踏切があったりするから、味があるのかもしれない。

 踏切を渡ると、いよいよ坂道が本格的に急になり始める。山へと向かって伸びる道へと入るのだが、一本目の急カーブを曲がった先に目的のおばけマンションはあった。

 市街が盆地であるため、山の斜面に建てられた高層マンションからは街の様子が一望できる。ただ、大して夜景が綺麗というわけではない。24時間やっている店なんてコンビニくらいだし、夜の仕事をしている人でも午前様になる前に仕事を終える。そんな調子の地域だから、それなりの時間になると街がしっかりと消灯するのだ。

 眠らない街――の真反対だ。夜はしっかりと寝るし、なんだかよく分からないけど、夜の3時くらいには起き出すおじいちゃんやおばあちゃんがいる街である。そのおじいちゃんやおばあちゃんから言わせれば、夜の3時ではなく、朝の3時なんだとか。まだうっすらとさえ明るくなっていないのに、歩いて畑作業などに向かう姿は、軽いホラーである。夜遊び帰りに何度驚かされたことか分からない。

 おばけマンションはその後ろが小高い山になっており、斜面には鬱蒼うっそうと杉の木が乱立している。日当たりの問題だと思いたいが、そんな立地のせいか、昼間でも辺りはどんよりとしており、なんだか薄暗い。市街から離れた閑静な立地もあり、だからこそおばけマンションだなんて呼ばれるのであろう。

 マンションの裏手が駐車場になっており、班目の車について裏手に回るが、さすがはおばけマンションだ。住人のものらしき車が一台も停まっていない。
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