猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】

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 峠を越えて、いつものように道の駅へとバイクを走らせる。休憩がてら売店に立ち寄り、豆大福とコーヒーで一服。最初は口に合わないと思っていたコーヒーであるが、豆大福との相性が絶妙なのだ。コーヒーが豆大福の風味を際立たせ、豆大福の風味がコーヒーのキレを際立たせる。この組み合わせは今のところ一里之の中で最強だった。

 小腹を満たした後、一里之と愛はバイクにまたがり、猫屋敷古物商店を目指す。集落の中にぽつんと出てくる商店。それこそ、国道沿いでもなんでもない店は、今でも幻の店のような扱いを受けているのであろう。もっとも、近所の人達や一里之達からすれば、都市伝説でもなんでもないわけだが。

 集会所にバイクを停めると、先客がいることに一里之は気づく。この田舎に似合わないクラシックカー。そのシルエットはどこかで見たことがあった。例の刑事の車である。

「あ、今日はあの刑事さんも来てるみたいだね」

 クラシックカーに一瞥いちべつをくれつつバイクを降りる愛。以前より付き合いのある刑事だとかで、事件解決の糸口になればと都市伝説を信じて、いわくつきの証拠品を持ち込んだのが知り合ったきっかけだったとか。千早も様々なものを査定するにあたって、警察関係者に知り合いがいるのは助かるのだとか。ギブアンドテイクがはっきりした関係だといえよう。

「あれかな? また猫屋敷のところに事件でも持ち込んでんのかな?」

 そんなことを漏らしつつ、一里之は愛と一緒に店のほうへと向かった。この時、実はまるで心当たりがないわけでもなかったが、愛には黙っていた。ガラス張りの引き戸を開けると、相変わらず子気味の良い音が響く。

「おや、どうやらお着きのようですよ」

 そう言ってアンティークの椅子から立ち上がったのは、やはり刑事である班目であった。カウンターのそばに座っていた彼の前にはお茶のみが出されている。おそらく、彼に豆大福が振舞われることは二度とないのだろう。千早の有する在庫を全て食い尽くしてしまったのだから。

「あ、刑事さん。この前はどうもありがとうございました」

 愛が愛想良く頭を下げる。一里之もそれにならって軽く会釈をした。相手が刑事だから――という理由なのか、どうにも班目のことを警戒してしまう。気を許せないといった具合だ。

「いえいえ、こちらこそ悪質な犯罪を検挙することができて助かりましたよ」

 班目がそう言って軽く頭を下げると、カウンターの奥にいた千早がカウンターから出てくる。

「一里之君に愛さん。急に呼び出して申しわけありませんでした。実はちょっとお聞きしたいことがありまして、こうしてご来店をお願いしたのです」
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