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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】
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「――ということで大地と正義。たった今、俺には予定が入っちまった。だから、今回はパスってことで」
そう言うと、明らかに羨望の眼差しが一里之へと向けられる。クラスから一線を引き、なんとなく近寄りがたい雰囲気を出している千早。しかしながら、それが逆にミステリアスでクールに見え、また容姿も整っていることから、実のところ彼女のことを狙っていた男子も多い。過去形なのは、千早がアプローチをことごとくかわし、そのガードの固さから【鋼鉄のガールフレンド】とさえ呼ばれるようになったからだ。自ら周囲と関与しないようにしている彼女だからこそ、あちらのほうから話しかけられるなんて、このクラスにおいて実にスペックの高いステイタスなのである。
「じゃあ猫屋敷。後で連絡するわ」
スマートフォンを取り出し、軽く『俺、猫屋敷との連絡先も交換しています』アピール。あぁ、なんだろうか。この優越感はなんだろうか。
「はい。あの、できれば愛さんも連れて来ていただけるとありがたいです」
てっきり自分にだけ声がかかったのかと思いきや、愛にも一緒に来て欲しいようだ。まぁ、言われずともそうするつもりだった。愛という存在がいながら、店で千早と2人っきりで過ごすというのは、もはや不貞行為に等しい。愛ならばぶちギレることだろう。一応、その辺りはわきまえているつもりだ。
「分かった。多分、大した予定も入ってないだろうから。もし、愛が駄目だったらどうする?」
そう返しつつも、すでに愛にメールを打ち始める一里之。それに対して千早は口を開く。相模と大海は口をあんぐりと開けたまま、一里之と千早の間に視線を往復させるばかり、
「その時は日を改めるということにしませんか? その――さすがに男の人と2人っきりというのはちょっと……あの、恥ずかしいので」
千早はそう言うとややうつむき、恥ずかしそうに首を傾げた。その頬はやや赤くなっていた。はっきり言おう。彼女のキャラクターがキャラクターだけに可愛い。
「どちらにせよ、今日は店を開けておきますから、後で連絡をください。それでは」
千早はそう付け加えると、鞄を手に教室を出て行ってしまった。その直後、一里之の首に太い腕が回される。肩を組むというか、むしろチョークスリーパーの前段階のような感じ。そんなことをしてきたのは相模のほうである。
「純平! お前、彼女というものがあろうに、いつから猫屋敷と親しくなったんだよぉ! なぁ――なぁ!」
そう言うと、明らかに羨望の眼差しが一里之へと向けられる。クラスから一線を引き、なんとなく近寄りがたい雰囲気を出している千早。しかしながら、それが逆にミステリアスでクールに見え、また容姿も整っていることから、実のところ彼女のことを狙っていた男子も多い。過去形なのは、千早がアプローチをことごとくかわし、そのガードの固さから【鋼鉄のガールフレンド】とさえ呼ばれるようになったからだ。自ら周囲と関与しないようにしている彼女だからこそ、あちらのほうから話しかけられるなんて、このクラスにおいて実にスペックの高いステイタスなのである。
「じゃあ猫屋敷。後で連絡するわ」
スマートフォンを取り出し、軽く『俺、猫屋敷との連絡先も交換しています』アピール。あぁ、なんだろうか。この優越感はなんだろうか。
「はい。あの、できれば愛さんも連れて来ていただけるとありがたいです」
てっきり自分にだけ声がかかったのかと思いきや、愛にも一緒に来て欲しいようだ。まぁ、言われずともそうするつもりだった。愛という存在がいながら、店で千早と2人っきりで過ごすというのは、もはや不貞行為に等しい。愛ならばぶちギレることだろう。一応、その辺りはわきまえているつもりだ。
「分かった。多分、大した予定も入ってないだろうから。もし、愛が駄目だったらどうする?」
そう返しつつも、すでに愛にメールを打ち始める一里之。それに対して千早は口を開く。相模と大海は口をあんぐりと開けたまま、一里之と千早の間に視線を往復させるばかり、
「その時は日を改めるということにしませんか? その――さすがに男の人と2人っきりというのはちょっと……あの、恥ずかしいので」
千早はそう言うとややうつむき、恥ずかしそうに首を傾げた。その頬はやや赤くなっていた。はっきり言おう。彼女のキャラクターがキャラクターだけに可愛い。
「どちらにせよ、今日は店を開けておきますから、後で連絡をください。それでは」
千早はそう付け加えると、鞄を手に教室を出て行ってしまった。その直後、一里之の首に太い腕が回される。肩を組むというか、むしろチョークスリーパーの前段階のような感じ。そんなことをしてきたのは相模のほうである。
「純平! お前、彼女というものがあろうに、いつから猫屋敷と親しくなったんだよぉ! なぁ――なぁ!」
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