108 / 226
査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】
2
しおりを挟む
「――ということで大地と正義。たった今、俺には予定が入っちまった。だから、今回はパスってことで」
そう言うと、明らかに羨望の眼差しが一里之へと向けられる。クラスから一線を引き、なんとなく近寄りがたい雰囲気を出している千早。しかしながら、それが逆にミステリアスでクールに見え、また容姿も整っていることから、実のところ彼女のことを狙っていた男子も多い。過去形なのは、千早がアプローチをことごとくかわし、そのガードの固さから【鋼鉄のガールフレンド】とさえ呼ばれるようになったからだ。自ら周囲と関与しないようにしている彼女だからこそ、あちらのほうから話しかけられるなんて、このクラスにおいて実にスペックの高いステイタスなのである。
「じゃあ猫屋敷。後で連絡するわ」
スマートフォンを取り出し、軽く『俺、猫屋敷との連絡先も交換しています』アピール。あぁ、なんだろうか。この優越感はなんだろうか。
「はい。あの、できれば愛さんも連れて来ていただけるとありがたいです」
てっきり自分にだけ声がかかったのかと思いきや、愛にも一緒に来て欲しいようだ。まぁ、言われずともそうするつもりだった。愛という存在がいながら、店で千早と2人っきりで過ごすというのは、もはや不貞行為に等しい。愛ならばぶちギレることだろう。一応、その辺りはわきまえているつもりだ。
「分かった。多分、大した予定も入ってないだろうから。もし、愛が駄目だったらどうする?」
そう返しつつも、すでに愛にメールを打ち始める一里之。それに対して千早は口を開く。相模と大海は口をあんぐりと開けたまま、一里之と千早の間に視線を往復させるばかり、
「その時は日を改めるということにしませんか? その――さすがに男の人と2人っきりというのはちょっと……あの、恥ずかしいので」
千早はそう言うとややうつむき、恥ずかしそうに首を傾げた。その頬はやや赤くなっていた。はっきり言おう。彼女のキャラクターがキャラクターだけに可愛い。
「どちらにせよ、今日は店を開けておきますから、後で連絡をください。それでは」
千早はそう付け加えると、鞄を手に教室を出て行ってしまった。その直後、一里之の首に太い腕が回される。肩を組むというか、むしろチョークスリーパーの前段階のような感じ。そんなことをしてきたのは相模のほうである。
「純平! お前、彼女というものがあろうに、いつから猫屋敷と親しくなったんだよぉ! なぁ――なぁ!」
そう言うと、明らかに羨望の眼差しが一里之へと向けられる。クラスから一線を引き、なんとなく近寄りがたい雰囲気を出している千早。しかしながら、それが逆にミステリアスでクールに見え、また容姿も整っていることから、実のところ彼女のことを狙っていた男子も多い。過去形なのは、千早がアプローチをことごとくかわし、そのガードの固さから【鋼鉄のガールフレンド】とさえ呼ばれるようになったからだ。自ら周囲と関与しないようにしている彼女だからこそ、あちらのほうから話しかけられるなんて、このクラスにおいて実にスペックの高いステイタスなのである。
「じゃあ猫屋敷。後で連絡するわ」
スマートフォンを取り出し、軽く『俺、猫屋敷との連絡先も交換しています』アピール。あぁ、なんだろうか。この優越感はなんだろうか。
「はい。あの、できれば愛さんも連れて来ていただけるとありがたいです」
てっきり自分にだけ声がかかったのかと思いきや、愛にも一緒に来て欲しいようだ。まぁ、言われずともそうするつもりだった。愛という存在がいながら、店で千早と2人っきりで過ごすというのは、もはや不貞行為に等しい。愛ならばぶちギレることだろう。一応、その辺りはわきまえているつもりだ。
「分かった。多分、大した予定も入ってないだろうから。もし、愛が駄目だったらどうする?」
そう返しつつも、すでに愛にメールを打ち始める一里之。それに対して千早は口を開く。相模と大海は口をあんぐりと開けたまま、一里之と千早の間に視線を往復させるばかり、
「その時は日を改めるということにしませんか? その――さすがに男の人と2人っきりというのはちょっと……あの、恥ずかしいので」
千早はそう言うとややうつむき、恥ずかしそうに首を傾げた。その頬はやや赤くなっていた。はっきり言おう。彼女のキャラクターがキャラクターだけに可愛い。
「どちらにせよ、今日は店を開けておきますから、後で連絡をください。それでは」
千早はそう付け加えると、鞄を手に教室を出て行ってしまった。その直後、一里之の首に太い腕が回される。肩を組むというか、むしろチョークスリーパーの前段階のような感じ。そんなことをしてきたのは相模のほうである。
「純平! お前、彼女というものがあろうに、いつから猫屋敷と親しくなったんだよぉ! なぁ――なぁ!」
0
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説

【完結】共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―
鬼霧宗作
ミステリー
窓辺野コトリは、窓辺野不動産の社長令嬢である。誰もが羨む悠々自適な生活を送っていた彼女には、ちょっとだけ――ほんのちょっとだけ、人がドン引きしてしまうような趣味があった。
事故物件に異常なほどの執着――いや、愛着をみせること。むしろ、性的興奮さえ抱いているのかもしれない。
不動産会社の令嬢という立場を利用して、事故物件を転々とする彼女は、いつしか【ロンダリングプリンセス】と呼ばれるようになり――。
これは、事故物件を心から愛する、ちょっとだけ趣味の歪んだ御令嬢と、それを取り巻く個性豊かな面々の物語。
※本作品は他作品【猫屋敷古物商店の事件台帳】の精神的続編となります。本作から読んでいただいても問題ありませんが、前作からお読みいただくとなおお楽しみいただけるかと思います。

消えた弟
ぷりん
ミステリー
田舎で育った年の離れた兄弟2人。父親と母親と4人で仲良く暮らしていたが、ある日弟が行方不明に。しかし父親は何故か警察を嫌い頼ろうとしない。
大事な弟を探そうと、1人で孤軍奮闘していた兄はある不可思議な点に気付き始める。
果たして消えた弟はどこへ行ったのか。
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる