107 / 226
査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】
査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】1
しおりを挟む
【1】
放課後を告げるチャイムほど、解放感に満ちたものはないだろう。もっとも、今日の数学は特に難解であり、それは一里之にとって目覚めのアラームにもなったのだが。授業終わりの慌ただしさの中で顔を上げると、大きく背伸びをした。これにて本日の業務は終了である。さっさと帰りの支度をしなければ。
基本的にノートやら教科書は学校のロッカーに置きっぱなしというスタンスの一里之にとって、学校に持ってくる荷物というのは極端に少ない。昼は基本的にコンビニで買ってきたパンなどがメインであり、だから鞄の中もほとんど空だ。帰りの支度もへったくれもない。
「純平。お前、今日暇?」
帰り支度を数秒で済ませてしまったところに、クラスメイトの相模大地と大海正義がやってきた。クラスの中でも仲が良く、つるんでいるメンバーである。相模は部活はやっていないものの趣味は筋トレであり、ガッチリとした筋肉質な体格に、ほぼ丸坊主という風体をしている。眉毛が元より薄く、また目が細いためか、まず初対面の人間はビビるだろう。大海に関しては、クラスで1位か2位を争うイケメンというやつである。そのせいか、女性関係について、あまりよろしくない噂も聞く。甘いマスク――とでも言おうか。女性が好みそうな中性的な容姿に長身という、天は二物を与えずなんて嘘だと証明したような人間である。
「ん? まぁ特に予定はないけど――」
そう答えると同時に一里之はどこからか視線を感じた。ふと、相模達の背後に千早の姿があったことに気づく。彼女は相模達のことなど気にせずと言った具合で近づいてきた。一時期、歩く度にシャカシャカと音が出るナイロンのズボンをスカートの下に履いていたのであるが、思った以上にシャカシャカ感が半端なかったのであろう。衣替えの時期と同時に、またスカートの下は黒タイツへと戻っていた。制服は夏らしい白基調のセーラー服になったが、彼女のトレードマークは健在だった。夏なのだから、いっそのこと黒タイツも履かなければいいのに――と思うのは、もしかすると単なる男の願望なのかもしれない。
「あの、一里之君。今日、少しお時間ありますか?」
千早が自然に一里之へと話しかけてきたことで、相模と大海の視線が一気に一里之へと集中する。
「うーん、今のところ別に予定はないけど」
「ならば、少しお願いしたいことがございます。お手数をかけますが、店までいらして下さるとありがたいです」
相模と大海の視線が千早のほうへと動き、そしてまた一里之のほうへと戻ってくる。その表情は明らかに驚いていた。なんだろうか、このとてつもない優越感のようなものは。
放課後を告げるチャイムほど、解放感に満ちたものはないだろう。もっとも、今日の数学は特に難解であり、それは一里之にとって目覚めのアラームにもなったのだが。授業終わりの慌ただしさの中で顔を上げると、大きく背伸びをした。これにて本日の業務は終了である。さっさと帰りの支度をしなければ。
基本的にノートやら教科書は学校のロッカーに置きっぱなしというスタンスの一里之にとって、学校に持ってくる荷物というのは極端に少ない。昼は基本的にコンビニで買ってきたパンなどがメインであり、だから鞄の中もほとんど空だ。帰りの支度もへったくれもない。
「純平。お前、今日暇?」
帰り支度を数秒で済ませてしまったところに、クラスメイトの相模大地と大海正義がやってきた。クラスの中でも仲が良く、つるんでいるメンバーである。相模は部活はやっていないものの趣味は筋トレであり、ガッチリとした筋肉質な体格に、ほぼ丸坊主という風体をしている。眉毛が元より薄く、また目が細いためか、まず初対面の人間はビビるだろう。大海に関しては、クラスで1位か2位を争うイケメンというやつである。そのせいか、女性関係について、あまりよろしくない噂も聞く。甘いマスク――とでも言おうか。女性が好みそうな中性的な容姿に長身という、天は二物を与えずなんて嘘だと証明したような人間である。
「ん? まぁ特に予定はないけど――」
そう答えると同時に一里之はどこからか視線を感じた。ふと、相模達の背後に千早の姿があったことに気づく。彼女は相模達のことなど気にせずと言った具合で近づいてきた。一時期、歩く度にシャカシャカと音が出るナイロンのズボンをスカートの下に履いていたのであるが、思った以上にシャカシャカ感が半端なかったのであろう。衣替えの時期と同時に、またスカートの下は黒タイツへと戻っていた。制服は夏らしい白基調のセーラー服になったが、彼女のトレードマークは健在だった。夏なのだから、いっそのこと黒タイツも履かなければいいのに――と思うのは、もしかすると単なる男の願望なのかもしれない。
「あの、一里之君。今日、少しお時間ありますか?」
千早が自然に一里之へと話しかけてきたことで、相模と大海の視線が一気に一里之へと集中する。
「うーん、今のところ別に予定はないけど」
「ならば、少しお願いしたいことがございます。お手数をかけますが、店までいらして下さるとありがたいです」
相模と大海の視線が千早のほうへと動き、そしてまた一里之のほうへと戻ってくる。その表情は明らかに驚いていた。なんだろうか、このとてつもない優越感のようなものは。
0
お気に入りに追加
179
あなたにおすすめの小説
ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―
鬼霧宗作
ミステリー
窓辺野コトリは、窓辺野不動産の社長令嬢である。誰もが羨む悠々自適な生活を送っていた彼女には、ちょっとだけ――ほんのちょっとだけ、人がドン引きしてしまうような趣味があった。
事故物件に異常なほどの執着――いや、愛着をみせること。むしろ、性的興奮さえ抱いているのかもしれない。
不動産会社の令嬢という立場を利用して、事故物件を転々とする彼女は、いつしか【ロンダリングプリンセス】と呼ばれるようになり――。
これは、事故物件を心から愛する、ちょっとだけ趣味の歪んだ御令嬢と、それを取り巻く個性豊かな面々の物語。
※本作品は他作品【猫屋敷古物商店の事件台帳】の精神的続編となります。本作から読んでいただいても問題ありませんが、前作からお読みいただくとなおお楽しみいただけるかと思います。
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
失くした記憶
うた
ミステリー
ある事故がきっかけで記憶を失くしたトウゴ。記憶を取り戻そうと頑張ってはいるがかれこれ10年経った。
そんなある日1人の幼なじみと再会し、次第に記憶を取り戻していく。
思い出した記憶に隠された秘密を暴いていく。
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)
隅の麗人 Case.1 怠惰な死体
久浄 要
ミステリー
東京は丸の内。
オフィスビルの地階にひっそりと佇む、暖色系の仄かな灯りが点る静かなショットバー『Huster』(ハスター)。
事件記者の東城達也と刑事の西園寺和也は、そこで車椅子を傍らに、いつも同じ席にいる美しくも怪しげな女に出会う。
東京駅の丸の内南口のコインロッカーに遺棄された黒いキャリーバッグ。そこに入っていたのは世にも奇妙な謎の死体。
死体に呼応するかのように東京、神奈川、埼玉、千葉の民家からは男女二人の異様なバラバラ死体が次々と発見されていく。
2014年1月。
とある新興宗教団体にまつわる、一都三県に跨がった恐るべき事件の顛末を描く『怠惰な死体』。
難解にしてマニアック。名状しがたい悪夢のような複雑怪奇な事件の謎に、個性豊かな三人の男女が挑む『隅の麗人』シリーズ第1段!
カバーイラスト 歩いちご
※『隅の麗人』をエピソード毎に分割した作品です。
戦憶の中の殺意
ブラックウォーター
ミステリー
かつて戦争があった。モスカレル連邦と、キーロア共和国の国家間戦争。多くの人間が死に、生き残った者たちにも傷を残した
そして6年後。新たな流血が起きようとしている。私立芦川学園ミステリー研究会は、長野にあるロッジで合宿を行う。高森誠と幼なじみの北条七美を含む総勢6人。そこは倉木信宏という、元軍人が経営している。
倉木の戦友であるラバンスキーと山瀬は、6年前の戦争に絡んで訳ありの様子。
二日目の早朝。ラバンスキーと山瀬は射殺体で発見される。一見して撃ち合って死亡したようだが……。
その場にある理由から居合わせた警察官、沖田と速水とともに、誠は真実にたどり着くべく推理を開始する。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる