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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【プロローグ】

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 当たり前だろうが、本人達も本当にエレベーターに喰われてしまうなんて信じていないのであろう。エレベーターに乗ることになったカネモトはニタニタとしているし、博士の声もなんだか軽い。これから、仲間が惨事に見舞われてしまうかもしれない――といった深刻さはまるでなかった。

「だってよ、だってよ――。5人でエレベーターに乗ったら、ブザーが鳴るんだぜ? どう考えてもキャパが小さ過ぎるだろ。運搬能力低すぎだって」

 カネモトが半笑いで言うと、カメラの外から博士の笑い声が飛び込んでくる。

「そ、それはあれだろ? キー坊の体重が限界突破をしてるからだろう」

 笑いを堪えながら放たれた博士の言葉は、カネモトの笑いのスイッチに触れたようだ。腹を抱えて笑い出すカネモトと、笑うまいとしながらも、カネモトにつられて笑いがこぼれる博士。どうやら、巨体の青髪がキー坊と呼ばれている人物のようだ。

「と、とにかく。もうみんなスタンバイしてるから。いいか? まず最上階――9階のエレベーター前でマソンヌが待機している。これからお前はエレベーターに乗って、まず9階のマソンヌのところに向かって生存確認をしてくれ」

 生存確認とは大げさであるが、万が一にでも人を喰うエレベーターがあるのだとすれば、1階から最上階に向かうまでの間にカネモトが喰い殺されてしまうかもしれない。だからこそ、あえて生存確認なんて言葉を使ったのであろうが、もちろん博士は本気でそんなことは言っていないのだろうし、カネモトも真には受けていないのであろう。

「で、7階のエレベーターホールにキー坊が、5階のエレベーターホールにジュンヤがいるから――」

 続ける博士の言葉をカネモトが遮った。

「そこでも生存確認すんの?」

「いや、通り過ぎるだけ。万が一、お前に何かあった時のために待機してるだけだから」

 返ってきた博士の言葉に、またしても腹を抱えて笑うカネモト。これが彼らのスタンスなのかもしれないが、きっと不快に思う人もいるだろう。

「あっはっはっは! 通り過ぎるだけとか」

「お前のために待機しているんだ。ライブ中継してるカメラこれだけだし、微塵も映らないがマソンヌ達は――お前に万が一のことがあったために、カッ、カメラに映らないのに待機してくれているんだ! はははははははっ」

 とうとう我慢の限界に達したのか博士までもが爆笑する。身内同士では面白いのかもしれないが、第三者からすれば、ちっとも面白くないやり取りだ。しばらくすると、ようやく笑いの収まったカネモトが急に真顔になった。
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