猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【プロローグ】

査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【プロローグ】1

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「どうもー! みなさんこんばんわ! ラクレスの――」

 それは、今の世の中では実にありふれている動画配信サイトの、俗にいう生放送……ライブ放送中に起きた。当時、ライブ映像を配信していたのは、自ら危険に首を突っ込むという過激な内容で人気を得ていた【ラクレス】という5人組。

「マソンヌでーす」

「キー坊でーす」

 慣れた感じでカメラの前にて自己紹介をしていく5人。それぞれの個性を出すためか、赤、緑、青、銀、金と髪の毛の色が異なる。

「ジュンヤでーす」

「博士でーす」

 もちろん、彼らが名乗っているのは本名ではない。動画を配信する際に利用する通り名のようなものだ。

「そして……ラクレスの中でもクレイジーな無謀者! カネモトでーす!」

 ぱっと見た感じでは、きっとカネモトと名乗った赤髪が、このグループのリーダー的な存在になるのだろう。どこぞのエレベーターホールらしき場所で撮影されているそれは、随分と夜遅くにライブ配信されたものだった。これが賃貸物件などだったら、騒音で苦情が出かねない――それほどに彼らのテンションは高かった。

「はい、今日はですね。ネットでも噂になっている、新潟は妻有郷と呼ばれるクソ田舎の、おばけマンションに来ていまーす!」

 案の定というべきか、ライブ放送されているのは、どうやらマンションのエントランスらしい。

「まぁ、ここって凄いよねぇ。だって、マンションだってのにオートロックとかついてないんだもん。部外者の俺達でも、ここまであっさり来れたもんね」

 名前は――どれがどれとかはさておき、背の低い緑髪がカメラの前に出る。あらかじめ台本でもあるかのように、その話に長身の銀髪が乗っかる。

「やっぱり、田舎ってのは防犯意識が薄いんですかねぇ」

 どこを拠点として活動しているのか不明だが、田舎を見下している感じは、きっとカメラ越しでもヒシヒシと伝わっていることであろう。批判のひとつやふたつは出てきそうなものだが、きっとネットの有名人にとって否定的な意見はあって当然のもの。あまり気にはならないのだろう。それよりも、田舎を馬鹿にすることで面白おかしくなれば、放送的にはオッケーみたいなスタンスに違いない。

「と言っても、このマンション――入居者ほとんどいないらしいですぞ」

 今度は縦にではなく横に大きな青髪が前に出る。その巨体がゆえに後ろの4人が隠れてしまい「いや、お前しか映ってねぇから!」と他のメンバーが突っ込むのは、おそらく彼らの中でのお決まりなのであろう。
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