猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定2 惨殺アイちゃん参上【エピローグ】

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「それと、あまり感心はできませんが、ネットがお祭り騒ぎでしてね――。なんというか、ネットには下手したら警察よりも優秀な捜査能力を持っている方がいるみたいで、実名から顔写真、住所までしっかり晒されてしまっています。元よりネットでも騒がれていた事件ですから、こうなるのも仕方がないのですが、かなりの有名人になってしまったようですね。携帯番号とかも晒されてましたから、きっと今頃は、携帯鳴りっぱなしなんじゃないでしょうか」

 器物損壊罪という、ほぼ実刑にたどり着くことはなく、またニュースにさえ取り上げられることがない軽犯罪。しかしながら、それはネットの力によって全国に広がってしまったようだ。自己主張をするためだけに動物を殺していた自己顕示欲の強い【惨殺アイちゃん】であるが、このような形で世間の注目を集めたのは不本意であろう。なんせ、有名になったのは【惨殺アイちゃん】ではなく、その中の人――河合あさお本人なのだから。

「法的には裁かれることはなかったけど、世間様がしっかり裁いてくれたってやつか」

 一里之がぽつりと漏らし、そして班目が頷いた。今後の【惨殺アイちゃん】がどのように生きていくのかは知らないが、多くの動物を殺害したごうは、間違いなくその背中にずっしりとのしかかり、目には見えない形で彼を苦しめ続けるのだろう。命あるものを殺めた代償は大きい。職を懲戒解雇で失ったのも、ネットで有名人になってしまったのも、おそらくは動物達の怨念が引き寄せたものである。そのような思念を――いわくと呼ぶ。

「さてと、事件の報告は以上です。犯罪の規模は小さい扱いになってしまいましたが、きっと彼が思っていた以上の代償を背負わされたことでしょうね。なによりも彼はもう【惨殺アイちゃん】にはなれない。正体をすっかり暴かれてしまいましたからねぇ。彼の自己主張の権化ごんげだった【惨殺アイちゃん】がいなくなったことですし、もう動物を殺そうなんて真似はしないでしょう」

 刑事である班目が、わざわざ報告に来てくれたおかげで、ようやく事件が解決したことを実感したのであろう。愛が安堵の溜め息らしきものを漏らし、一里之が「これで一件落着ってか――」と笑みを浮かべる。

 相変わらず集会所からは楽しげな声が聞こえてくる。それをBGMにして、事件解決の余韻に浸る一同。千早はご好評をいただいた豆大福を改めて一里之達に出してやるのだが、まだこの時の千早は知らない。まさかストックしてあった豆大福が、一里之達……主に班目の手によって全滅してしまうことを。そう、まだ――知らない。


【査定2 惨殺アイちゃん参上 ―完―】
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