猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定2 惨殺アイちゃん参上【エピローグ】

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「でも、犯人が捕まってくれたおかげで学校にも通えるようになったみたい。全部が全部元通りってわけにはいかないけど、巻き込まれた人達にも、それなりに平和が戻ってきたみたい」

 雛撫高校を騒がせた【惨殺アイちゃん】事件。巻き込まれた人達は運が悪かったとしかいえないが、それなりの平穏を取り戻したようだ。

「それと、堺先生が例の刑事さんによろしく伝えて欲しいって。被害届の件で学校とやり取りをする際にも、徹底して凶器のことを伏せてくれていたみたいで――。おかげさまで学校と工場の取り引きの話も順調に進んでいるみたい」

 愛がそこで言葉を区切ってお茶に手を伸ばした時のことだった。店の出入口のほうで引き戸を引く音がして、緑の匂いが店内へと漂ってきた。

「そいつは良かったですねぇ。まぁ、事前にその辺りのことは店主さんから話を受けていましたから。私はその通りに事を進めただけです」

 店内に入ってきたのは、髪をオールバックにした長身の男。噂をすれば影――なんていうが、まさしくそのタイミングでのご登場である。

「やややや、今日はお客さんが多いですねぇ。あー、あの時、一緒におられた方ですかぁ。それならばちょうど良かった」

 彼――班目は愛と一里之の顔を見ると何度か頷く。職業柄、人の顔を覚えるのは得意なのかもしれない。愛は「先日はありがとうございました」と頭を小さく下げ、しかし一里之は表情を硬くして「ど、どうも……」と縮こまる。

「あー、そんなに緊張なさらないで結構。刑事なんて因果な商売をやってますが、私は公私の区切りをしっかりつけたいタイプでしてねぇ。今この場で未成年の喫煙を補導したりはしませんよ」

 班目はそう言うと、笑顔で一里之の肩を叩いた。一里之は「えっ?」と間抜けな声をあげて頬をひきつらせる。

「おや? ちょっとカマをかけただけでしたが、図星でしたか」

 きっと、一里之が表情を強張こわばらせたから、何か後ろめたいことがあると察したのであろう。そこから推測して一里之にカマをかけてみたら、実に分かりやすい反応が返ってきたというわけだ。

「あ、いや――その」

 明らかに動揺する一里之に対して、班目はいたずらな笑みを浮かべながら続ける。

「まぁ、そう心配なさらずに。ここにいる時はお互い、猫屋敷古物商店のお客ということで――。ねぇ、店主さん」

 ここで話を振られても困るのであるが、とりあえず頷いておく。一里之と班目が、この店の客だということに間違いはないのだから。
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