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査定2 惨殺アイちゃん参上【解答編】
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「えっと、これは任意同行というやつでしてね。嫌でしたら拒否していただいても結構です。まぁ、そもそも任意同行というのは犯罪の嫌疑がある方に対してお願いすることですので、ここで拒否されたところで、しっかりと周辺を調べ上げてから改めてお邪魔するだけですが」
班目と名乗った刑事は、まるで遠慮なしといった具合で【惨殺アイちゃん】に歩み寄る。そこにはある種の風格のようなものがあり、やはり犯罪者に慣れているような雰囲気があった。
「あ、いや――」
警察に捕まったところで、問われる罪は器物損壊罪程度。再起不能になるような致命的な罪状ではないだろう。
「そんなに怖がらなくも結構ですよ。学校側と示談が成立することもありますし、そもそも不起訴処分で終わることだってあります。まぁ、今回は特別に私が事件を担当させていただきますし、恐れることはなにもありませんよ」
班目は【惨殺アイちゃん】のところまで歩み寄ると、続けて一言だけ漏らした。
「強いて言うならば、私が大の動物好き――というのがネックかもしれませんがねぇ」
その陽気な感じでありながら、どこかドスのきいた声に、はたで見ている一里之でさえゾッとした。優しそうに見えるが刑事は刑事だ。さっきまでは余裕をぶっこいていた【惨殺アイちゃん】は、表情を引きつらせていた。
「では、参りましょうか。あぁ、もう一度言いますが、これは任意同行ですので、拒否することもできますけど、どうします?」
トドメと言わんばかりの言葉に、ただただ【惨殺アイちゃん】は――いいや、弱き者を虐げることにしか己を見出せぬ悲しき中年男性は、ただただうなだれるばかりだった。班目に促されて自宅へと戻り、着替えやら戸締りを済ませて戻ってくる。
「それでは、私はこれで。もう時間も時間ですから、お早めに帰宅されますように」
班目は【惨殺アイちゃん】の手を引くようにしてクラシックカーに向かうと、千早に向かって手を振った。
「無理を言って申しわけありませんでした。この埋め合わせは後ほど……」
「いえいえ、いつもお世話になっていますからねぇ。これくらいお安い御用ですよ。むしろ、事件解決にご協力ありがとうございました」
千早が頭を下げると、もっともらしく敬礼をする班目。学校を騒がせた【惨殺アイちゃん】は、クラシックカーの後部座席へと乗り込み、運転席へと戻った班目は、赤色灯をクラシックカーの屋根に乗せると、それを点灯させながら一里之達の前から姿を消した。
――翌日、雛撫高校では緊急の全体集会が開かれたそうだ。
班目と名乗った刑事は、まるで遠慮なしといった具合で【惨殺アイちゃん】に歩み寄る。そこにはある種の風格のようなものがあり、やはり犯罪者に慣れているような雰囲気があった。
「あ、いや――」
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「そんなに怖がらなくも結構ですよ。学校側と示談が成立することもありますし、そもそも不起訴処分で終わることだってあります。まぁ、今回は特別に私が事件を担当させていただきますし、恐れることはなにもありませんよ」
班目は【惨殺アイちゃん】のところまで歩み寄ると、続けて一言だけ漏らした。
「強いて言うならば、私が大の動物好き――というのがネックかもしれませんがねぇ」
その陽気な感じでありながら、どこかドスのきいた声に、はたで見ている一里之でさえゾッとした。優しそうに見えるが刑事は刑事だ。さっきまでは余裕をぶっこいていた【惨殺アイちゃん】は、表情を引きつらせていた。
「では、参りましょうか。あぁ、もう一度言いますが、これは任意同行ですので、拒否することもできますけど、どうします?」
トドメと言わんばかりの言葉に、ただただ【惨殺アイちゃん】は――いいや、弱き者を虐げることにしか己を見出せぬ悲しき中年男性は、ただただうなだれるばかりだった。班目に促されて自宅へと戻り、着替えやら戸締りを済ませて戻ってくる。
「それでは、私はこれで。もう時間も時間ですから、お早めに帰宅されますように」
班目は【惨殺アイちゃん】の手を引くようにしてクラシックカーに向かうと、千早に向かって手を振った。
「無理を言って申しわけありませんでした。この埋め合わせは後ほど……」
「いえいえ、いつもお世話になっていますからねぇ。これくらいお安い御用ですよ。むしろ、事件解決にご協力ありがとうございました」
千早が頭を下げると、もっともらしく敬礼をする班目。学校を騒がせた【惨殺アイちゃん】は、クラシックカーの後部座席へと乗り込み、運転席へと戻った班目は、赤色灯をクラシックカーの屋根に乗せると、それを点灯させながら一里之達の前から姿を消した。
――翌日、雛撫高校では緊急の全体集会が開かれたそうだ。
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